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MLB

“ビッグボス”の「常識に囚われない野球」の課題は? 新庄剛志監督に求められるのは、奇をてらった采配ではなく――

出野哲也

2022.05.01

ここまでは、話題性が先行している新庄監督。チームが立て直しの時期にあって、その采配力が問われ続けている。写真:塚本凜平(THE DIGEST編集部)

ここまでは、話題性が先行している新庄監督。チームが立て直しの時期にあって、その采配力が問われ続けている。写真:塚本凜平(THE DIGEST編集部)

 春季キャンプの段階から、日本ハムを率いる“ビッグボス”こと新庄剛志監督は、「今年1年間はトライアウト」と宣言していた。ある時には「優勝なんか目指しません」とも言っていたが、指揮官の“公約”通りに? チームは開幕から負けが込み、最下位にいる。
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 ある意味で有言実行と言えなくもない現状だが、勝利を期待するファンが失望するのは当然。そのせいか札幌ドームの観客動員は、ビッグボスが世間で話題になっているわりには伸び悩んでいる。

 では、現時点でのチームの問題はなにか。それは必要がない者まで”トライアウト”の対象になっている点だ。具体的には全日本メンバーでもある近藤健介と、レナト・ヌニエス、アリスメンディ・アルカンタラの両新外国人である。

 近藤は開幕戦で6番を務めたのをはじめ、すでに1番から6番までの打順を経験。アルカンタラも4番以外の全打順を打っていて、ヒットを打った次の試合で、スタメンから外される日もあった。近藤やアルカンタラはともかく、ここまで打率.187、本塁打なしというヌニエスの調子がなかなか上がらないのは、こうした定まらない起用法のせいもあるのではないか。

 それでも打順の決め方が論理的なら納得できるのだが、そのようには見えないのだ。4月3日のオリックス戦では控え捕手の郡拓也を4番に抜擢したところ、すべて走者を置いての4打席でいずれも凡退。チームも2対4の接戦を落としてしまった。

 今月21日の楽天戦でも、打率.120だった今川優馬を3番に起用。こちらは本塁打を含む2安打と結果を出したが、なぜクリーンナップの一角だったのかは不透明だ。チャンスを与えるにしても、中軸を打たせる必要はどこにもなく、打線のつながりを遮断してしまっている場合が多い。

 打順だけでなく守備位置もシャッフルされている。開幕からセンターで使われ続けている近藤は、外野の軸となってほしいとの意図があるようなのだが、そのせいでセンターとしてはリーグ屈指の守備力を持つ淺間大基が浮いてしまっている。

 やむを得ず淺間は、三塁や一塁などに回されているのだが、彼の長所が生かされないだけでなく、打力優先のポジション配置がマイナスとなっている感が否めない。

 投手の使い方も同様だ。エースの上沢直之は、4月10日の楽天戦では中4日で先発。「先発陣の球数を抑え、登板機会を増やすため」との説明はあったものの、その後は6日以上の間隔で投げさせているように一貫性を欠いている。

 いきなり申告敬遠を命じられた宮西尚生が驚きの表情を浮かべていた今月3日のオリックス戦に代表されるように、投手とコーチの意思疎通が上手く行っていないように見える。投手陣が、パ・リーグ最下位の防御率4.03(※4月30日時点)と不振にあるのも、こうした点に原因があるのではないか。

 上沢にしろ、宮西にしろ、今さら実力を見極める必要のない選手であるのは言うまでもない。戦力不足であるのは監督のせいではないにしても、勝利のために最善の手を尽くしているように思えない。「常識に囚われない野球」を目指すにしても、外してはいけない基本線を見失えば、今以上にチームは瓦解しかねないのだ。
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