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“ビッグボス”の「常識に囚われない野球」の課題は? 新庄剛志監督に求められるのは、奇をてらった采配ではなく――

出野哲也

2022.05.01

いままで満足にチャンスが与えられなかった選手たちが出場機会を得ている今季の日本ハム。そのなかで、とりわけ若手選手たちは活気に満ちている。写真:塚本凜平(THE DIGEST編集部)

いままで満足にチャンスが与えられなかった選手たちが出場機会を得ている今季の日本ハム。そのなかで、とりわけ若手選手たちは活気に満ちている。写真:塚本凜平(THE DIGEST編集部)

 ここまで批判点を連ねてきたが、もっとも、新庄監督の新体制になってから改善された点も少なくない。まずは、単純にベンチのムードが良くなった点だ。過去数年は全体的に湿っぽい雰囲気が漂っていたが、“重し”になっていたベテランがいなくなったせいか、若手や中堅の選手たちが明るい表情で伸び伸びプレーしている。

 今川、万波中正の両外野手は合わせて9本塁打を記録。投手では吉田輝星が、昨年まで二軍でひたすら磨いてきたストレートで中継ぎとして好投を続け、ルーキーの北山亘基も抑えに抜擢されて結果を出している。

 中堅レベルでは、松本剛が打率・盗塁の2部門でリーグ首位を走り、石井一成もチームトップの15打点を叩き出すなど、攻守ともこれまでとは見違えるようなシャープさを見せている。シーズンを通じてこの調子が保てるかどうかは別として、埋もれかけていた戦力が活用されているのはまさしく「トライアウト」の効用だろう。

 そしてまた、あらゆる選手がチャンスを与えられるため、良い意味で緊張感が保たれている。それが顕著なのは守備面で、昨年リーグワーストの76失策だったのが、今季は27試合で12失策。これはリーグで3番目に少ない数字だ。

 ポジションが固定されておらず、息の合った連携プレーなど望めない状態を考えれば、随分と改善されていると言えるのではないか。ビッグボスが就任時から目標に掲げていた守備の強化は順調に進んでいると断言できる。

 開幕当初は奇をてらった采配も多く、「自分が目立ちたいだけなのではないか」との声も聞かれたが、打順の入れ替え以外は次第に落ち着いてきてはいる。野手は故障者と高卒新人を除けば、一軍で使われていないのはたった3人である。

 トライアウトの看板に偽りはなく、目先の勝利に囚われずに将来を見据えて戦うのも、必ずしも間違いではない。ただ、現状のまま結果を出せずにいれば、ファンにそっぽを向かれかねない。シーズンが進んでいき、各球団との争いが熾烈を極めていくなかで、新庄監督には、バランスをとった采配が求められる。

文●出野哲也

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