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プロ野球

バースデーアーチをふいにしたモレル、衣笠は連続試合出場タイ記録が「あと1イニング」でお預けに――プロ野球「雨に消された記録」たち<SLUGGER>

筒居一孝(SLUGGER編集部)

2022.06.15

雨に濡れる甲子園球場。ドーム球場以外では、雨はほとんど百害あって一利なしだ。写真:滝川敏之

雨に濡れる甲子園球場。ドーム球場以外では、雨はほとんど百害あって一利なしだ。写真:滝川敏之

 いよいよ梅雨の季節がやってきた。元来「太陽の下で遊ぶスポーツ」の野球にとって、雨はあまりありがたいものではない。ここではプロ野球における「雨に消された記録たち」を紹介しよう。

▼雨に消えた2発のバースデーアーチ

 2016~17年にオリックスに在籍したブレント・モレルという助っ人がいる。2年間で通算132試合に出場して9本塁打と平凡な成績に終わったのだが、いろいろな意味で雨に泣かされた男でもあった。

 16年4月21日の楽天戦。この日が29歳の誕生日だったモレルは、4番・一塁でスタメン出場。初回2死二塁の場面でバックスクリーンに放り込み、来日初本塁打をバースデーアーチで飾った。さらに3回の第2打席には、左中間へソロホームランを放って2打席連発の祝砲を挙げた。

 だが、折悪しくもこの日は初回から雨がぱらついており、2本目の時にはさらに勢いを増していた。結局、3回裏途中で降雨ノーゲームが宣告され、せっかくの2発はなかったことに。本人も「残念だけど何とも言えない。答えようがないよ。自分ではどうしようもないからね」と苦笑いするしかなかった。

 この年、モレルは最終的に8本塁打に終わっており、この2本が有効なら2ケタ本塁打に到達していたはずだった。つまり、モレルはたった1日の雨で、「来日初本塁打」「バースデーアーチ」「2ケタ本塁打」のすべてを逃す羽目になったのだった。
 
▼『あぶさん』でも取り上げられた本塁打王レース
 
 雨は時にタイトル争いすらも左右する。1977年のパ・リーグ本塁打王は、確実にボールを捉えて快打を飛ばすレロン・リー(ロッテ)と、193センチの長身から規格外の打球を飛ばすボビー・ミッチェル(日本ハム)の争いとなった。

 5月までにリーが20本塁打を量産して一時は突き放すも、ミッチェルは毎月安定したペースで打ち続け、7月以降は2本差でピッタリとついていった。だが、結局そのわずかな差が埋まらないまま、34本塁打のリーが32本のミッチェルを制してタイトルを手にした。

 だが、実はミッチェル、4月29日と7月11日にそれぞれ1本塁打ずつ打っていながら、両方とも降雨ノーゲームで記録抹消になっていた。雨さえなければ、ミッチェルも同数でタイトルを獲得していたはずだったのだ。なお、このエピソードは水島新司氏の漫画『あぶさん』でも取り上げられている。

 同様の事態は82年にも起こっている。この年はロッテの落合博満、阪急(現オリックス)のウェイン・ケージ、日本ハムのトニー・ソレイタらが激しく本塁打王を争い、最終的に落合がタイトルを獲得した(落合はこの年が初の三冠王)。だが、1本差で2位に入ったケージも、実は5月3日に放ったグランドスラムが降雨ノーゲームで消えており、これさえなければ落合の“単独三冠王”ではなく、2人のホームラン王が生まれていたはずだった。
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