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大谷と大型長期契約を結べば勝利はさらに遠のく?エンジェルスが抱える“究極のジレンマ”<SLUGGER>

久保田市郎(SLUGGER編集長)

2022.06.17

23年オフにFAとなる大谷。新たな契約額は一体いくらになるのだろうか。(C)Getty Images

 2023年オフにFAとなる大谷翔平(エンジェルス)の周囲がまた騒がしくなってきた。

 先日、ウェブメディア『ジ・アスレティック』のケン・ローゼンタールが、スプリング・トレーニング中にエンジェルスが大谷の代理人と契約延長についての予備的な話し合いを持ったと報道。記事によれば、球団は大谷と再契約するためには、年平均で史上最高年俸(メッツのマックス・シャーザーの4333.3万ドル=約57億4000万円)をオファーしなければならないと理解しているが、大谷サイドが要求するであろう長期間の契約にはためらいを見せているという。

 この記事を受け、唯一無二の二刀流選手の今後の動向についてさまざまな憶測が飛び交っている。

 だがここで、SLUGGER3月号で書いたことをもう一度繰り返したい。
 もし大谷が本当に勝ちたいなら、23年オフにフリー・エージェントとなった時、新天地へ旅立つべきだ。

 なぜなら、ドジャースやアストロズ、ブルージェイズなどと違って、現在のエンジェルスには今後、長期間にわたって優勝を争うための地盤が整っていないからだ。
 話を進める前に、まず基本的な前提条件を押さえておこう。

 エンジェルスは19年3月にマイク・トラウトと12年4億2650万ドル、その年のオフにはアンソニー・レンドーンと7年2億4500万ドルの超大型契約を交わした。

 大谷がFAとなって新契約を得る24年、エンジェルスはトラウト、レンドーン、そしてクローザーのライセル・イグレシアスの3人だけに合計9000万ドル(約119億円)近くもの年俸を払うことがすでに決まっている。

 大谷の新契約が仮に年平均4500万ドルだとして、4人で1億3500万ドル。総年俸を戦力均衡ライン以下にとどめるなら、残り22人の年俸を1億ドル以内に収めなければならない(24年の戦力均衡税課税ラインは2億3700万ドル)。今後2年間で伸び盛りの若手選手が何人も出てくれば不可能ではないかもしれないが、あいにくエンジェルスのファーム組織充実度はMLB.comのランキングで30球団中28位。それは期待できそうにない。