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プロ野球

もし根尾昂が日本ハムに入団していたら…大谷翔平の二刀流プロジェクトを成功させた強い信念と育成力に再び脚光<SLUGGER>

出野哲也

2022.06.17

今や世界最高級の野球選手となった大谷(左)。根尾は「二刀流」ではなく投手転向となった(右)写真:Getty Images、産経新聞社

今や世界最高級の野球選手となった大谷(左)。根尾は「二刀流」ではなく投手転向となった(右)写真:Getty Images、産経新聞社

 根尾昂(中日)の投手転向が発表され、大きな反響を呼んでいる。
 大阪桐蔭高時代から投手としても野手としても才能を発揮してきたし、5月21日の広島戦でプロ初登板を果たした際には150キロの速球も投げていたから、青天の霹靂というほどではない。

 しかしながら、プロ入り後ずっと野手としてプレーしてきて、4年目のシーズン途中に突然投手へコンバートというのは、どうしても場当たり的な印象は否めない。評論家や球団OBの間でも少なからず反対意見が聞かれ、スポーツ新聞の実施したウェブによる読者アンケートで否定派が半数以上を占めていた。

 疑問の声が多い一番の理由は、立浪和義監督の起用方針に一貫性が欠けている点だ。昨年秋の就任直後には外野への本格コンバートを明言し、今季は登録も内野から外野へ変更された。ところが4月下旬になって遊撃への再転向を指示。監督は「外野ではなかなか出る機会がないし、京田(陽太)にライバルらしいライバルもいない」ことをその理由に挙げていた。
 京田が5月初めに二軍落ちすると、根尾は再び一軍に昇格したが、遊撃での出場はほとんどなく、挙げ句の果てには開幕3ヵ月で2度目のコンバートと相成った。これが確固たる育成方針に基づいての決定だとは、どう見ても思えない。しかも、投手に専念するのはシーズン後で、今季中は代打などで打つ機会を与えるらしく、どうにも中途半端な印象だ。

 根尾に対しては以前から「打てなかったら投手にする」と伝えていたようだが、本人は「今シーズンの終わりまでの話だと思っていた」とシーズン途中での投手転向に戸惑いもあった様子。「もっと打ちたいという気持ちは持っています」とも繰り返し語るなど、野手への未練を残しているように見受けられる。

 いずれにしても今回の決定により、22歳にして野手としての可能性に見切りがつけられたことになる。昨年までの3年間で83試合に出場し、打率.165、1本塁打。二軍でも2割そこそこの低打率にとどまっていたので仕方ないとも思えるが、根尾が高校時代から高い評価を得ていたのは、それこそ投打両方で高い潜在能力の持ち主だったから。二刀流の可能性がほぼ消滅したことで、そうした「スペシャルな存在」という魅力がなくなってしまったのは惜しい気もする。
 

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