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MLB

問われるロボット審判を巡る“是非”。現役審判と選手は何を語る?「ロボ審判とは異なるコールを何度もしたよ」。 <SLUGGER>

豊浦彰太郞

2022.07.03

年々その立場が危ぶまれている審判。ロボット審判の導入が濃厚な見込みとなり、彼らは何を思うだろうか。(C)Getty Images

年々その立場が危ぶまれている審判。ロボット審判の導入が濃厚な見込みとなり、彼らは何を思うだろうか。(C)Getty Images

 日米とも、相変わらず審判や判定に関する話題がネットを賑わせている。これを好機と捉えたという訳ではないだろうが、MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーは2024年にロボット審判を導入する可能性に言及している。 

 ぼくが小学生だったその昔(1970年代前半だ)、21世紀ははるか先で、「21」という数字自体が未来の象徴だった。(ぼくにとっては、高橋一三や東尾修の背番号だったが)。その頃、子どもが夢に描く21世紀の代表的テクノロジーが、テレビ電話と空飛ぶクルマだった。 

 その数年後、日本シリーズでは本塁打がフェアかファウルかを巡って試合が1時間19分も中断した。その4年後、打球の判定について某球団の2コーチが審判を暴行するという事件が起きた。「小突く」というレベルではなく、倒れ込んだ後も足蹴にするなど「ボッコボコ」にしたのだ。その後長い年月が流れた。 

 映像を伴う会話はもはや日常だし、空飛ぶクルマですらその芽は見てとれる。ビデオリプレーは一般的になり、フェアかファウルかで長時間試合が中断したり、いわんや暴行事件に至ることはあり得ない。 

 ストライク、ボールの判定にも大きな変化が押し寄せている。メジャーリーグは、電子機器の判断を球審が参照しコールを下す、通称ロボット審判(正式にはAutomated Ball Strike System)を提携先の独立リーグであるアトランティック・リーグでの実験を経て、現在は一部のマイナーリーグで運用している。

 もっともマンフレッドは、コールはあくまで球審が独自の判断で行い、ロボ審判は判定への抗議であるチャレンジ制度用としての使用の可能性も匂わせているようだが。 
 
 ロボ審判のメリットは、何より判定が安定していることだ。

 2019年にぼくは、ロボ審判を含む各種の新ルール実験を取材すべくアトランティック・リーグを訪れたが、選手はおしなべてこの点を挙げ、肯定的だった。見るからに最先端技術に疎そうなオールドスクール派のある監督(元メジャーリーガーだった)ですら、「判定で揉めて進行が遅れるより、こっちの方が良い」と言い切った。 

 しかし、ある審判員は「時代の流れと受け入れるしかない」としながらも、「個人的にはクソだ」と憤懣やるかたない様子だった。「ロボ審判はゾーンをかすめる投球を正確に判断できない、オレはロボ審判とは異なるコールを何度もしたよ」。 

 彼は怒りだけでなく懸念も示した。「ロボットさんのお助けが必須となりゃ、審判の地位は低下する」というのだ。「オレはかつてマイナーのトライアウトに参加したが採用されなかった。だけどベースボールが心底好きで、審判の道を選んだんだ。オレみたいなヤツは減っていくんじゃないか」と、最後には寂しそうに語った。 

【動画】誤審、誤審、誤審の嵐。現地も大荒れしたストライク判定をチェック
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