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プロ野球

「10割を求めたくなる」——パ・リーグMVP森友哉の才能に心底惚れ込んだ西谷監督の“思い”

氏原英明

2019.11.26

天才的な打撃で首位打者&MVPを受賞した森。その才能は高校、いや中学時代から片鱗を見せていた。写真:徳原隆元

天才的な打撃で首位打者&MVPを受賞した森。その才能は高校、いや中学時代から片鱗を見せていた。写真:徳原隆元

 寒風吹きすさぶ12月も下旬に差し掛かった頃だった。
 
 今から10年も前のことだ。大阪府の河内長野市にある中学硬式クラブチーム「堺ビッグボーイズ」のグラウンドの駐車場に降り立つと、なぜか、そこにはいる予定のない男がいた。

 西谷浩一。

 のちに2度の甲子園春夏連覇を果たす、大阪桐蔭の指揮官だ。

 朝8時過ぎからの練習に合わせてグラウンドに着いたのだったが、チーム関係者の誰もが驚きを隠せない男の登場に、一瞬、空気が凍った。

 有望な中学生を視察に行く西谷の熱心さは噂に聞いていた。ある日、突然、現れるのだと。その日がまさに西谷が視察に出向いた日で、彼が視線を送り続けたのが、当時、中学2年生だった森友哉だった。
 ミートセンスに優れ、迷いなくフルスウィングして広角に長打を飛ばす。身長170cmと小柄ながら、今季は捕手として54年ぶりの首位打者に輝き、何度もチームを勝利に導いた天才打者にして、2019年のパ・リーグMVPに輝いた男だ。

 中学時代から名を馳せた森は、強豪・大阪桐蔭の指揮官の目にとまり、それからも順調な成長曲線を描いてきた。

 幾多の逸材をプロに送り出している西谷が中学時代の森にどのような未来を見出したのだろうか。

 かつて、当時の話を聞いたことがある。

「野球小僧ですよ。野球が大好きっていうのが身体中からにじみ出ていましたね。僕は選手を見に行く際に能力ももちろん見ますけど、野球が好きかどうかっていうのを結構、大事にしているんですよ。

 この子と一緒に野球がやりたいなと思いました。技術的な部分でいうと、当時すでに木製バットで打っていたんですよね。それも、フルスウィングで。最近の高校生は木製バットを使うようになっていますけど、ほとんどの選手が慣らし運転みたいな感じでしょう。でも、中学時代の森は完全に使いこなしていた。金属バットで打っているかのようなバッティングをしていたんです。こんな選手がおるんやなぁと、驚かされました」

 もちろん、森がそれだけの打撃技術を備えていたのは天性のセンスがあったからだけではない。堺ビッグボーイズというチームが、木製バットで緩いボールを逆方向に振り切っていくという練習を意識させていたからだ。

「パーフェクト・インサイドアウト」。メジャーリーグの環境と似た練習風景が堺ビッグボーイズにはあり、森はその中で、将来に必要な技術を身につけていったのだった。
 
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