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プロ野球

なぜ失策数で守備を評価すべきでないのか。UZRが照らす“真の名手”とは【野球の“常識”を疑え!第4回】<SLUGGER>

DELTA

2022.09.21

「守備力」を捉えるには失策数では不十分。守備の目的から見える本質を探ろう。写真:徳原隆元

「守備力」を捉えるには失策数では不十分。守備の目的から見える本質を探ろう。写真:徳原隆元

「守備力が高い」という表現から何をイメージするだろうか。軽やかなグラブさばき、捕ってからの早さ、正確な送球……。いずれも、守備の名手にとって欠かせない要素だ。しかし、そもそも何をもって「守備力が高い」とされるべきなのだろうか。そして、データによる守備評価はどのようなアプローチでこれに迫ってきたのだろうか。

 従来、守備はグラブさばきなどの技術論、あるいは失策や守備率といったデータによって評価されてきた。しかし、これらはいずれも、単体の評価基準としては十分ではない。守備の目的はあくまで「アウトを取り、それによって失点を防ぐこと」にある。グラブさばきなどの技術はあくまでその手段であって。アウトを獲得したという結果につながることで初めて意味を持つ。

 データに目を向けると、失策や守備率はミスをどれだけ犯したかを測る、いわば減点法の考えに立脚している。打球に追いつけなかった選手も、追いついたが失策を犯してしまった選手も、アウトを獲得できなかったという点では同様だ。にもかかわらず、失策は後者にマイナス評価を与える。従来の評価方法は、「失点を防ぐ」という守備本来の目的にフィットしていないのだ。

 では、どのようにして守備の評価を行うべきなのだろうか。減点法よりも適切なのが加点法だ。アウトを取ることが目的なのであれば、そのアウトの数を数えればいい――こうした発想で1970年代に生み出されたのが「レンジファクター」という指標だ。

  レンジファクターはそれぞれの野手が9イニングあたりに獲得したアウト数を表す。これなら、失策では測りきれなかった守備範囲の広さにもアプローチが可能で、失策に比べてより守備本来の目的に沿った考え方と言える。
 
 この減点法から加点法への転換が、守備評価発展の契機となった。レンジファクターは単純にアウトを数えるだけで、その難易度を考慮しないという課題があったのだが、その後はその欠点を補う指標が次々と登場。近年ではUZR(Ultimate Zone Rating)やOAA(Outs Above Average)といった、さらに精度の高い守備指標が誕生し、広く活用されている。

 この中で、今回は「UZR」について見ていこう。UZRは同じポジションの平均的な選手が同じだけ守った場合に比べ、守備でどれだけ失点を防いだかを表す指標だ。例えば、今季の源田壮亮(西武)は881イニングで遊撃を守り、UZR13.3を記録している。これは、平均レベルの遊撃手が守っていた場合に比べ、源田はチームの失点を約13点減らしていることを意味している。

 UZRは、フィールドを細かく分割して打球データを取得し、難易度を考慮した上で算出する。そのため、従来の公式記録からだけでは算出できない。だが、UZRについて本当に注目すべきは、別のところにある。そして、それを理解することが、実は守備の本質を、ひいては野球の本質を理解することにつながる。

【動画】“源田たまらん”! 西武・源田壮亮の圧倒的守備をチェック
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