過去に類を見ない、９球団が１位指名を公表した2022年のドラフト会議はやや波乱含みだったと言えるかもしれない。前評判の高かった選手の一部が思うような評価を得られなかった一方、ドラフト目前になって急浮上した選手が多かった印象だ。

　おそらく１位公表が増えた要因は、今年のドラフト候補の評価が分かれたからに違いない。

　球団として、誰を信じるのかーー。

　それができた選手を１位指名した。抽選によって交渉権を得た楽天の石井一久監督の喜びようや、巨人・原辰徳監督の感慨深い表情には、評価した選手への強い思い入れを感じずにはいられなかった。

　すべての指名を見終えた後に感じたのは、各球団それぞれスカウトたちの評価に特色があり、それに準じて補強ポイントを埋めていく作業は一筋縄ではいかなかっただろうということだ。各球団の指名をランク付けするとと、以下のようになる。

●阪神：Ａ

　ここ数年、ドラフトでの指名と育成の双方がともにうまくいっている。

　だからこそ戦力にムラがない。あえていうなら右打者の層を厚くするのが補強ポイントだったが、いずれにしても「今ドラフトのNo.１を指名できる」状況にあった。

　そんな阪神が狙いを定めたのは、高校生では最高のスラッガー、浅野翔吾（高松商高）だった。これは１位指名を公言していた巨人との抽選の末外したものの、今度は大学No.１スラッガーの森下翔太（中央大）を指名。昨年のドラフトで小園健太（市和歌山高→DeNA）を外した後、森木大智（高知高）を指名したのと同じだ。浅野の代わりに森下というのは、あまり実力には遜色がない。左打者が多いチーム構成にうまくハマるはずだ。

　２位以降は高校生を中心に指名した。３位の井坪陽生（関東第一高）、５位の戸井零士（天理高）はともに右打者。投手は、２位で門別啓人（東海大学付属札幌高）、４位で茨木秀俊（帝京長岡高）と、将来性が豊かな左右の両輪の交渉権を獲得した。最後に社会人のサウスポー・富田蓮（三菱自動車岡崎）を指名しているが、こちらもまだ21歳で伸び盛りの選手。これからに期待したい。
  ●ロッテ：Ａ

　荘司康誠（立教大）に１位入札し、阪神と同じく抽選を外したが、補強ポイントはしっかり埋めた。

　外れ１位は超がつくくらいの即戦力・菊地吏玖（専修大）を指名。上背こそ異なるが、美馬学のような小気味いいピッチングができる。また、２位で友杉篤輝（天理大）、５位で金田優太（浦和学院高）と手薄な二遊間を補強。３位の田中晴也（日本文理高）はスケール感があり、将来は佐々木朗希、種市篤暉とともに強力なローテーションを組めるだろう。

　さらに４位ではチームに手薄なサウスポーの高野脩汰（日本通運）を指名。即戦力投手として期待も高い。

●オリックス：Ａ

　パ・リーグを連覇したオリックスは、今年もドラフト指名を成功させた。

　即戦力左腕の候補として大学ナンバーワン左腕の曽谷龍平（白鴎大）を単独指名。吉田正尚、杉本祐太郎の後のスラッガー候補として、内藤鵬（日本航空石川）と杉澤龍（東北福祉大）を、それぞれ２位と４位で指名するなど、将来の準備に抜かりがない。

　一方、近年は着実に育成が成功している高校生投手は素材型の２人を指名している。３位の齋藤響介（盛岡中央）は質の良いストレートが武器で、オリックスの育成方針にまさに合致しそう。５位の日高暖己（富島）も今年夏の甲子園で才能の片鱗を見せた怪腕だ。