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プロ野球

氏原英明のドラフト採点:1位抽選を外しても阪神とロッテは最高評価。一方、くじを引き当てた巨人と楽天は……<SLUGGER>

氏原英明

2022.10.21

●西武:C

 主力野手の多くにFA権獲得が近づいている西武にとって、今ドラフトはとても重要だった。その中でも、将来を意識できていたとは思う。

 1位指名の蛭間拓哉(早稲田大)は力強いバッティングが売り。外野手のレギュラー争いが激化している現在のチームに、さらなる刺激を与えてくれるはずだ。守備・走塁では現状の選手たちに敵わないものの、打力は持ち味。一塁へのコンバートも視野に入れつつ期待したい。

 また、攻守が持ち味の小兵の二塁手・児玉亮涼(大阪ガス)を6位で指名した。源田壮亮との二遊間コンビ形成は楽しみだ。投手陣に厚みを加える青山美夏人(亜細亜大/4位)、山田陽翔(近江高/5位)の2人も指名でき、さらに強肩強打の捕手・野田海人(九州国際大付高)を獲得できたのも大きい。大ヒットはないが堅実な指名だったように思う。

●広島:D

 指名がうまくいかなかったというよりも、指名の裏側を見てみないと読みにくい要素が強い。チームビジョンがハッキリしない印象のため、評価を上げられなかった。

 広島は1位の斉藤優汰(苫小牧中央)、2位の内田湘大(利根商)は全国では無名だが、磨けば光る逸材との評判だ。新井貴浩新監督が就任して育成を意識していくにはちょうど良い人選と言える。将来のチームの顔になれる可能性を秘める。

 一方、3位以降は即戦力の社会人を多く指名した。捕手や外野手も指名したが、二塁手やスラッガータイプを指名しなかったのはやや不安が残る。確かに、現在も若い世代に満足のいく戦力はそろっているが、それに安心してしまっているような怖さを感じる。もっと戦力の厚みを意識しても良かったのではないか。
 
●ソフトバンク:D

 今年も「独自路線」を貫いた。

 1位指名で潜在能力の高いイヒネ(誉)を獲得。遊撃の今宮健太の後釜にと考えているのだろう。その後も2位で大津亮介(日本製鉄鹿島)、5位で松本晴(亜細亜大)と即戦力タイプの投手を指名し、現戦力の穴埋めに走った。

 将来性のある4位の大野稼頭央(大島高)は鹿児島の離島出身とあって話題性もあり、期待値の高いサウスポーとも言えるだろう。支配下最後の指名には吉田賢吾(桐蔭横浜大)と捕手を選んだ。

 どの選手も補強ポイントに合致するのだが、アマチュアの第一線で結果を残した者ばかりではない。

 ドラフトはプロで活躍するかどうかをイメージするわけだから、確かにアマチュア時代の成績は関係ない。それゆえの“独自路線”(あるいは”独自目線”)だが、その目線が近年、結果を残していると言い難いのも事実なのだ。

 直近で言えば、17年は甲子園でほとんど実績のない吉住晴斗(鶴岡東高)が同様の例だった。1位でサプライズ指名は誰もが驚いたが伸びしろは見せられず、一軍出場がないまま4年後の21年に引退してしまった。育成ドラフトで結果を残している反面、支配下では伸び悩みも多い。それだけに現時点では評価がしにくいと言える。

●楽天:D

 ロッテとの競合で荘司康誠(立教大)を引き当てたことに加えて、近年の課題でもある右打者の底上げを目指して平良竜哉(N T T西日本)を5位指名。だが、他は投手ばかり、それも大学・社会人に終始した。

 確かに、楽天の先発陣は岸孝之、涌井秀章、田中将大など高齢化が著しい。即戦力の投手陣に需要があるのは理解できるが、目先を見過ぎている印象だ。これはGMが監督も兼ねる歪な状況が招いているゆえの結果に他ならず、来年勝てたとしても、その先に不安が残る。

「来年は是が非でも結果を残したい」。これは監督・石井一久の思いだろう。しかし、GM・石井一久は同じであってはいけない。そんなことを感じずにはいられなかった。

文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)

【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
 

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