ヤクルトの村上宗隆がチーム史上11人目となる新人王に選出された。
セ・リーグ新人王レースは、実質村上と近本光司(阪神)の一騎打ちとなった。セ・リーグ新人安打記録を更新した近本も129票を集めたが、投票総数300のうち、168票と過半数以上を獲得した村上に軍配が上がった。
主に一塁でチームの全143試合に出場したプロ2年目、19歳の村上は、ともにリーグ3位の36本塁打と96打点をマーク。いずれも10代の選手では歴代最多で、これまでの新人王獲得選手でも清原和博(西武/1986年)と桑田武(大洋/59年)が記録した31本、長嶋茂雄(巨人/58年)が記録した92打点を上回った。10代で満塁本塁打とサヨナラ本塁打を記録した選手は村上だけだ。
高卒野手の新人王獲得は史上8人目で、セ・リーグでは88年の立浪和義以来2人目の快挙だ。立浪は高卒プロ1年目ながら開幕スタメンの座を勝ち取ると、遊撃でゴールデン・グラブ賞に輝く守備力でリーグ優勝に貢献したことが評価されて栄誉に浴した。だが、打撃は受賞者史上最低の打率.223でわずか4本塁打。選手のタイプとしては村上と対極だった。
ちなみにセ・リーグでは村上が初だが、パ・リーグでは清原以外にも高卒長距離打者の新人王はいる。たとえば豊田泰光(西鉄/53年)が遊撃にもかかわらず27本塁打を放っている。これは清原に破られるまで高卒新人最多記録だった。 だが歴史的に見ても、村上や清原、豊田のように、早くから長距離砲として開花を果たしたタイプはとても少ない。村上と同じ左打ちでタイプの似ている松井秀喜(巨人/93年)でも、1年目は11本で、2年目も20本止まり。30本の大台をクリアしたのは4年目(38本)だった。
筒香嘉智(DeNA)や鈴木誠也(広島)ら日本代表で4番を張ったスラッガーも、本格化までには時間を要した。筒香は1年目から二軍で26本塁打、88打点の二冠に輝き、10月には一軍デビューしてホームランも記録。2年目はイースタン最多の14本に加え、一軍でも8本をスタンドインさせたが、完全にレギュラーに定着したのは5年目だった。
鈴木もルーキーイヤーに二軍で93試合に出場して一軍デビューを果たし、2年目には初アーチを放ったが、主力と呼ばれるようになったのは4年目からだ。高卒野手としては2人とも着実にステップを踏んではいるが、今季の村上のように、プロ2年目にしてチームの中心選手に成長し、タイトル争いに加わったわけではない。今昔の名選手と比較することで、高卒野手としての村上の希少性が浮き彫りになる。
歴史に名を刻む活躍を見せた村上だが、打率.231は両リーグワースト。打率最下位で30本塁打以上を放った打者は7人目と、珍しい記録にも名を残した。また、184三振はセ・リーグ記録を更新。真の一流打者への道のりは、粗さを克服できるかどうかがポイントになりそうだ。現時点での発展途上は、同時に今後の可能性も示す。真価が問われる″2年目の進化"を心待ちにしたい。
文●藤原彬
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『スラッガー』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。
セ・リーグ新人王レースは、実質村上と近本光司(阪神)の一騎打ちとなった。セ・リーグ新人安打記録を更新した近本も129票を集めたが、投票総数300のうち、168票と過半数以上を獲得した村上に軍配が上がった。
主に一塁でチームの全143試合に出場したプロ2年目、19歳の村上は、ともにリーグ3位の36本塁打と96打点をマーク。いずれも10代の選手では歴代最多で、これまでの新人王獲得選手でも清原和博(西武/1986年)と桑田武(大洋/59年)が記録した31本、長嶋茂雄(巨人/58年)が記録した92打点を上回った。10代で満塁本塁打とサヨナラ本塁打を記録した選手は村上だけだ。
高卒野手の新人王獲得は史上8人目で、セ・リーグでは88年の立浪和義以来2人目の快挙だ。立浪は高卒プロ1年目ながら開幕スタメンの座を勝ち取ると、遊撃でゴールデン・グラブ賞に輝く守備力でリーグ優勝に貢献したことが評価されて栄誉に浴した。だが、打撃は受賞者史上最低の打率.223でわずか4本塁打。選手のタイプとしては村上と対極だった。
ちなみにセ・リーグでは村上が初だが、パ・リーグでは清原以外にも高卒長距離打者の新人王はいる。たとえば豊田泰光(西鉄/53年)が遊撃にもかかわらず27本塁打を放っている。これは清原に破られるまで高卒新人最多記録だった。 だが歴史的に見ても、村上や清原、豊田のように、早くから長距離砲として開花を果たしたタイプはとても少ない。村上と同じ左打ちでタイプの似ている松井秀喜(巨人/93年)でも、1年目は11本で、2年目も20本止まり。30本の大台をクリアしたのは4年目(38本)だった。
筒香嘉智(DeNA)や鈴木誠也(広島)ら日本代表で4番を張ったスラッガーも、本格化までには時間を要した。筒香は1年目から二軍で26本塁打、88打点の二冠に輝き、10月には一軍デビューしてホームランも記録。2年目はイースタン最多の14本に加え、一軍でも8本をスタンドインさせたが、完全にレギュラーに定着したのは5年目だった。
鈴木もルーキーイヤーに二軍で93試合に出場して一軍デビューを果たし、2年目には初アーチを放ったが、主力と呼ばれるようになったのは4年目からだ。高卒野手としては2人とも着実にステップを踏んではいるが、今季の村上のように、プロ2年目にしてチームの中心選手に成長し、タイトル争いに加わったわけではない。今昔の名選手と比較することで、高卒野手としての村上の希少性が浮き彫りになる。
歴史に名を刻む活躍を見せた村上だが、打率.231は両リーグワースト。打率最下位で30本塁打以上を放った打者は7人目と、珍しい記録にも名を残した。また、184三振はセ・リーグ記録を更新。真の一流打者への道のりは、粗さを克服できるかどうかがポイントになりそうだ。現時点での発展途上は、同時に今後の可能性も示す。真価が問われる″2年目の進化"を心待ちにしたい。
文●藤原彬
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『スラッガー』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。