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ダルビッシュ以外は知らないWBC決勝という「新しい景色」。若き侍ジャパンは「準決勝の壁」を破れるか<SLUGGER>

ナガオ勝司

2022.12.12

東京五輪では金メダルを獲得した侍ジャパン。だが、WBC優勝への道はずっと険しい。(C)Getty Images

「アメリカでもワールドカップって盛り上がってるんですか?」と訊かれれば、とりあえず、「話題にはなってますよ」と答えることにしている。

 まず何より、ワールドシリーズも中継している『FOX』が独占中継していて、2チャンネル体制でグループステージから全試合生中継している。同局の情報番組や夜のニュースでも、アメリカ代表の勝敗ぐらいは取り上げられていたし、普段はそんな風にアメリカでサッカーがニュースになるなどないため、「話題にはなってる」という答えになるわけだ。

 ただし、(ネットを通じて知る)日本の報道とは随分違う。

 中継局以外ではあまり取り上げられることがないし、日本代表と同じ決勝トーナメント1回戦の敗退なのにアメリカ代表がホワイトハウスに招かれなかった。さらに彼らが帰国する様子が伝えられることも、記者会見が行われることもなかった。 ワールドカップという国際大会の規模や、アメリカ代表の過去の成績を考えれば、グループステージを勝ち抜いたというニュースは大きいはずなのだが、彼らの活躍はサッカーファン以外には認識されてないような気がした。

 そもそも、アメリカは他国で行なわれるスポーツイベント(だけじゃないかも知れないが)に、あまり関心を持っている国ではない。
 
 アメリカン・フットボールはもちろん、ベースボールやバスケットボールなど、自国に世界最高峰のリーグがあるからだろう。日本で開催された野球の国際大会「プレミア12」より、自国開催のリトルリーグ世界大会の方が話題になるし、他国で開催されたバスケットボールのワールドカップなどもあまり話題になった痕跡がない。

 それだけに、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は、それなりに話題になる。予選参加国が12か国、本戦でも20ヵ国と、ワールドカップのそれ(予選参加国が210か国、本戦32か国)とは比較にならない局地的な「国際大会」ではあるが、そんなことは誰も気にしてない。

 主催者で決勝ラウンドの固定開催国にして、商業的に圧倒的な主導権を持つ米国のプロ野球=メジャーリーグ(MLB)が、無理矢理にでも話題にするのが、WBCという大会なのだ。

 マイク・トラウト(エンゼルス)や、ムーキー・ベッツ(ドジャース)がアメリカ代表のユニフォームを着て戦うことは、ワールドカップで善戦したサッカー代表と同じ熱量で話せる。

 ドミニカ共和国代表のブラディミール・ゲレーロ・Jr.(ブルージェイズ)やホアン・ソト(パドレス)、プエルトリコ代表のカルロス・コレア(現在FA今)やフランシスコ・リンドーア(メッツ)らおなじみのオールスター選手が、ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(エンジェルス)、鈴木誠也(カブス)ら日本人選手と対戦することが、彼らにとっての国際大会なのだ。

 もちろん、オープン戦開催中に同時進行で開催されるWBCについては「親善試合だろう?」や「開幕に向けて調整中だろう?」と、選手たちの本気度がほとんど毎回話題になるが、それも問題ではない。
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「WBC=お祭り」。だが、決勝進出への道は険しい