MLB

グリーンモンスター直撃の二塁打増加に期待もホームランは?吉田正尚とレッドソックス本拠地との気になる“相性”<SLUGGER>

大南淳【DELTA】

2022.12.17

背番号は7に決まった吉田。手厳しいことで知られるボストンのファンの期待に応えられるか。(C)Getty Images

 現地12月15日、レッドソックスと契約した吉田正尚がボストンで入団会見を行なった。5年9000万ドル(約122億4000万円)+ポスティング料1540万ドル(約20億9440万円)という契約額は昨オフにカブスへ入団した鈴木誠也を上回り、アメリカでも驚きをもって迎えられた。

 果たして、吉田は期待に応えられるのか。そして、独特の形状で知られる本拠地フェンウェイ・パークは、29歳のサムライが力を発揮しやすい環境なのだろうか。

 まず、吉田の打者としての特徴を改めて客観的に捉え直してみよう。最大の武器は出塁能力の高さだ。昨季と今季にパ・リーグで2年連続最高出塁率のタイトルを獲得し、2020年には驚異の出塁率.453を記録。パワーも備えたスラッガーでもあるのだが、吉田といえばまず出塁だ。

 この出塁能力の源泉となっているのが、バットコントロールの良さである。吉田は極めて空振りが少なく、三振に終わることがほとんどない。今季の三振割合(三振/打席)はわずか8.1%。これはリーグベストの数字だ。2020、21年には6%を切っていた。
 
 三振が少ない打者の中には、安打を狙いすぎて四球獲得を苦手とする選手もいる。しかしご存知のとおり、吉田は四球出塁にも秀でている。スウィングする/しないの判断が非常に優れており、今季の四球割合は(四球/打席)はリーグトップの15.7%。41三振に対して80四球と、三振をはるかに上回る四球を獲得している。この打席アプローチこそが、彼の最大の武器と言っていいだろう。

 ただ、この武器がそのままMLBで通用するとは限らない。鈴木もNPBでは吉田と同様、優れた打席アプローチを発揮していたが、メジャー1年目の今季は日本時代と比べて四球が大幅に減少し、三振が激増。NPB時代に比べ、ゾーン内中心の配球に苦戦した。吉田についても、同様の事態が起こる可能性はある。ただ、逆に言うと、レッドソックスはこのスキルがMLBでも十分通用すると踏んだからこそあれだけの条件を提示したのだろう。

 吉田は前述した出塁能力に加え、長打力も備えたスラッガーだ。これについてはもはや説明するまでもないだろう。ではその長打力はレッドソックスで生かされるのだろうか。よく知られているように、本拠地フェンウェイ・パークはレフトに高さ11.3メートルの"グリーン・モンスター"がそびえ立っており、打者のタイプによって有利・不利が出やすい球場だ。
NEXT
PAGE
レフトには巨大フェンスがそびえ立ち、右中間が深いフェンウェイ・パーク