昨季は73勝68敗でリーグ2位となったDeNA。1998年以来のリーグ優勝を狙う2023年、春季キャンプでまず注目されるのは中日からトレードで加入した京田陽太だ。
16年ドラフト2位でプロ入りした京田は1年目に新人王を獲得。その後も、21年までショートのレギュラーを守り続けていた。昨季は攻守に精彩を欠き、オフに放出されることになったが、果たして新天地DeNAで活躍する見込みはあるのだろうか。
確かに昨季の京田は低調だった。打率/出塁率/長打率は.172/.248/.297。自己ワーストの打撃成績もあり出場機会は激減。わずか43試合、143打席の出場に終わっている。
振るわなかったのは打撃だけでない。守備面でも同様だった。同じポジションを守る選手と比べ、どれだけ失点を防いだかを表す守備指標UZR(Ultimate Zone Rating)で見ると、昨季の京田は遊撃を333イニング守り、-9.2。これは昨季300イニング以上出場したセ・リーグの遊撃手10名の中でワーストの値だった。
しかし、21年までの京田はセ・リーグでも最高レベルの好守を誇っていた。ルーキーイヤーの17年から21年でのUZRを合計すると、38.7。これは坂本勇人(巨人)、大和(DeNA)、田中広輔(広島)らを凌いでリーグトップとなる。昨季は不調だったが、持っている能力は本物だ。
▼セ・リーグ遊撃UZRランキング(2017~2021)
京田陽太 38.7
坂本勇人 29.6
西浦直亨 -5.2
大和 -7.5
田中広輔 -14.3
※期間内に遊撃2000イニング以上守った選手を対象
京田の守備について、より詳しく掘り下げてみよう。まずはUZRの構成要素の一つである「守備範囲評価」を使い、定位置から三遊間側、二遊間側どちらを得意としていたのかを見る。京田の守備範囲評価は、定位置から三遊間側は-2.6とほぼ平均レベルであるのに対し、二遊間側では26.5。この期間、二遊間側の打球処理で平均レベルの遊撃手に比べて26.5点分もチームの失点を減らしていたことになる。
しかも、DeNAは遊撃手の守備力に問題を抱えているチームだ。14年~22年の9シーズンにおけるチーム全体の遊撃手UZRを合計値でを見ると、DeNAは-62.6でリーグ5位ワーストだった。
▼ セ・リーグ遊撃手UZR(2014~2022)
1 巨人 70.7
2 中日 41.5
3 ヤクルト -32.2
4 広島 -38.6
5 阪神 -62.6
6 DeNA -90.3
昨季も-6.6と平均以下に沈んでおり、遊撃守備は現在も変わらず大きな問題である。それだけに、安定した守備実績を誇る京田の加入は大きい。
しかし、そんな京田もすんなりレギュラー獲得というわけにはいかなそうだ。19年のドラフト1位で入団した森敬斗が順調に出場機会を増やし、昨季は61試合に出場している。
そして、この森も守備成績は素晴らしい。昨季は375.1イニングで遊撃を守り、UZR3.1を記録。メジャーリーガーのような広い守備範囲と強肩でたびたびチームを救った。より出場機会が増えたとき守備指標がどういった推移をたどるかは分からないが、非常に期待の持てる成績ではある。
昨季、遊撃でチーム最多65試合に先発出場したベテランの大和もいるが、おそらくこの森が京田の最大のライバルになるだろう。
どちらにしても、守備でのプラスの貢献という、ここしばらくチームに遊撃手に欠けていた要素をもたらしてくれるはず。京田の加入、そして森の台頭は大貫晋一のようなゴロ系投手にとっても成績を押し上げる材料になるはずだ。ハイレベルなポジション争いを期待したい。
文●DELTA(@Deltagraphs)
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。
16年ドラフト2位でプロ入りした京田は1年目に新人王を獲得。その後も、21年までショートのレギュラーを守り続けていた。昨季は攻守に精彩を欠き、オフに放出されることになったが、果たして新天地DeNAで活躍する見込みはあるのだろうか。
確かに昨季の京田は低調だった。打率/出塁率/長打率は.172/.248/.297。自己ワーストの打撃成績もあり出場機会は激減。わずか43試合、143打席の出場に終わっている。
振るわなかったのは打撃だけでない。守備面でも同様だった。同じポジションを守る選手と比べ、どれだけ失点を防いだかを表す守備指標UZR(Ultimate Zone Rating)で見ると、昨季の京田は遊撃を333イニング守り、-9.2。これは昨季300イニング以上出場したセ・リーグの遊撃手10名の中でワーストの値だった。
しかし、21年までの京田はセ・リーグでも最高レベルの好守を誇っていた。ルーキーイヤーの17年から21年でのUZRを合計すると、38.7。これは坂本勇人(巨人)、大和(DeNA)、田中広輔(広島)らを凌いでリーグトップとなる。昨季は不調だったが、持っている能力は本物だ。
▼セ・リーグ遊撃UZRランキング(2017~2021)
京田陽太 38.7
坂本勇人 29.6
西浦直亨 -5.2
大和 -7.5
田中広輔 -14.3
※期間内に遊撃2000イニング以上守った選手を対象
京田の守備について、より詳しく掘り下げてみよう。まずはUZRの構成要素の一つである「守備範囲評価」を使い、定位置から三遊間側、二遊間側どちらを得意としていたのかを見る。京田の守備範囲評価は、定位置から三遊間側は-2.6とほぼ平均レベルであるのに対し、二遊間側では26.5。この期間、二遊間側の打球処理で平均レベルの遊撃手に比べて26.5点分もチームの失点を減らしていたことになる。
しかも、DeNAは遊撃手の守備力に問題を抱えているチームだ。14年~22年の9シーズンにおけるチーム全体の遊撃手UZRを合計値でを見ると、DeNAは-62.6でリーグ5位ワーストだった。
▼ セ・リーグ遊撃手UZR(2014~2022)
1 巨人 70.7
2 中日 41.5
3 ヤクルト -32.2
4 広島 -38.6
5 阪神 -62.6
6 DeNA -90.3
昨季も-6.6と平均以下に沈んでおり、遊撃守備は現在も変わらず大きな問題である。それだけに、安定した守備実績を誇る京田の加入は大きい。
しかし、そんな京田もすんなりレギュラー獲得というわけにはいかなそうだ。19年のドラフト1位で入団した森敬斗が順調に出場機会を増やし、昨季は61試合に出場している。
そして、この森も守備成績は素晴らしい。昨季は375.1イニングで遊撃を守り、UZR3.1を記録。メジャーリーガーのような広い守備範囲と強肩でたびたびチームを救った。より出場機会が増えたとき守備指標がどういった推移をたどるかは分からないが、非常に期待の持てる成績ではある。
昨季、遊撃でチーム最多65試合に先発出場したベテランの大和もいるが、おそらくこの森が京田の最大のライバルになるだろう。
どちらにしても、守備でのプラスの貢献という、ここしばらくチームに遊撃手に欠けていた要素をもたらしてくれるはず。京田の加入、そして森の台頭は大貫晋一のようなゴロ系投手にとっても成績を押し上げる材料になるはずだ。ハイレベルなポジション争いを期待したい。
文●DELTA(@Deltagraphs)
【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。