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侍ジャパン

未知の選手の「品評会」でもあるWBC。アメリカのファンも期待する新たなスター候補の出現<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.02.17

独特の角度から投じられる大勢のストレートは、MLBスカウトの注目を集める可能性十分だ。写真:THE DIGEST写真部

独特の角度から投じられる大勢のストレートは、MLBスカウトの注目を集める可能性十分だ。写真:THE DIGEST写真部

「スカウトは金持ちになりたくて、スカウトをやってるわけじゃない。彼らは直接的な経験則でべースボールを理解していて、意見を持っているからスカウトをやっている。彼らを明日、解雇して、科学者を雇い、機械を購入すれば、たくさんの数字を知ることは出来るだろうが、(スカウトからの)はっきりした推薦を聞くことはない。スカウトは一人の人間が、自らの知見のすべてを捧げるユニークな仕事であり、最後の、真のアメリカ人なのだと思う」
『DOLLAR SIGN ON THE MUSCLE』(1984年)より

【画像】WBCに挑む侍ジャパン30名の顔ぶれを厳選PHOTOで一挙紹介!

 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)という壮大な「お祭り」の主催者であるメジャーリーグ(MLB)機構の関係者は、大会の興行収入の他にも、いくつか注目していることがある。

 その一つは日本や韓国、台湾やキューバなど、普段はナマで観ることができない「外国人選手」たちを、スカウティングできることだ。とりわけ、日本プロ野球で主力として活躍中の選手については、東京ドームでの予選ラウンドから数多くのスカウトがネット裏に集結することになる。

 彼らにとっては、すでにメジャー球団に所属しているダルビッシュ有(パドレス)や大谷翔平(エンジェルス)、鈴木誠也(カブス)や吉田正尚(レッドソックス)、そして史上初の日系人WBC戦士であるラーズ・ヌートバー(カーディナルス)は眼中にない。

 野手であれば、村上宗隆(ヤクルト)や牧秀悟(DeNA)、投手なら山本由伸(オリックス)や佐々木朗希(ロッテ)、上沢直之(日本ハム)や今永昇太(DeNA)、あるいは松井裕樹(楽天)らを「ナマ」で見ることが大事なのではないかと思う。
 そして、彼らをスカウティングする過程で、たとえば伊藤大海(日本ハム)や栗林良吏(広島)、高橋奎二(ヤクルト)や宇田川優希(オリックス)、湯浅京己(阪神)も必ずMLBスカウトのレーダーに捉えられる。

 彼らに今、「メジャー移籍」の意思があるかどうかは関係ない。彼らが日本球界で何年活躍していて、フリー・エージェント(FA)になるまで何年かかるのかということも、この場合あまり関係ない。侍ジャパンに選ばれたNPB戦士というだけで、彼らはMLBのレーダーにかかるのだ。

 井口資仁(当時ホワイトソックス)や、城島健司(当時マリナーズ)の凱旋で話題になった2006年の日米野球を視察に訪れた旧知のア・リーグ中地区の某球団スカウトは、東京ドームでの第3戦を終えた夜、こう言っていた。

「日本には他にもいい選手が大勢いる。とくに今夜の試合で先頭打者本塁打を打ったスワローズの外野手は、今すぐにでもアメリカに連れて帰りたいぐらいだ」

 彼が言う「スワローズの外野手」とは、当時、プロ3年目で2年連続打率3割を達成し、キャリア最多の41盗塁を記録した青木宣親のことだった。

 それからずっと後、12年にポスティング制度でブルワーズに移籍することになる青木は、同年の第1回WBCに出場しているものの、「メジャー移籍」を公言していたわけではない。つまり、スカウトは純粋に自分の目で判断して、青木選手を「今すぐにでもアメリカに連れて帰りたい」と率直な感想を持ったわけだ。

 同年、オリオールズのエース格だった左腕エリック・ビダード投手からの先頭打者本塁打は確かに印象的だったし、半分、社交辞令みたいなものも入ってるんだろうな、と思いつつ、福岡ドームで行われた最後の第5戦の夜、食事をすることになった。その席で彼が再びこう言った。
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