「今日の先発投手には驚かされた。緩急の使い方がとても巧いし、スピードガンの計測より速く感じたよ」
それは最終戦で5回4安打6三振と好投した和田毅投手(ソフトバンク)のことだった。後にオリオールズに移籍することになる左腕について、同スカウトは「彼の球に慣れればどうなるかは分からないけど」と前置きして、こう続けるのだった。
「(ライアン・)ハワード(当時フィリーズ)やアンドリュー(・ジョーンズ/当時ブレーブス)ならまだしも、コンタクトの上手いジョー・マウアー(当時ツインズ)からも三振を獲るのは、その才能があるからだと思う」
ハワードはその年、58本塁打を放ってMVPに輝いた若き大砲であり、ジョーンズは現在も殿堂入り有力候補となる万能選手、そして、マウアーはその数年後、捕手では史上最多3度の首位打者タイトルを獲得したスーパースターである。そんな彼らから三振を奪い、4回までパーフェクト投球を見せた左腕MLBスカウトの好奇心をくすぐるのは当たり前だろう。
まだYoutubeもTwitterもなく、トラックマンやホークアイなどの最先端機器もなかった時代のスカウトが、ナマで見たNPBの選手に驚いたというのは、とても自然なことだった。
そういうことが、WBCでもきっと起こる。
06年当時よりもはるかに選手たちの映像は入手しやすくなっているし、今ではMLBの各球団が駐在スカウトを置くことも珍しくなくなっている。データ全盛の時代なので、ナマで見た時のインパクトを過大評価する人はいないだろうが、こう考えてほしい。
侍ジャパンの「抑え候補」と言われている大勢(巨人)の、独特のアングルからの速球が、MLBスカウトの目に留まらないわけがない。
同じく20代前半の戸郷翔征投手(巨人)や、宮城大弥(大阪オリックス)、高橋宏斗(中日)投手らが力のある球を投げ、打者を打ち取る術を見せれば、MLBのスカウトが無視することなどできるわけがない、と。
そういう意味で、WBCには(MLBスカウトにとっての)外国人選手の実力を見定める、「品評会」のような側面もあるのだが、それはスカウトだけではなく、アメリカの野球ファンにとっても同じではないかと思う。
プレミア12やオリンピックで活躍した選手のピッチングやファインプレーがSNSで頻繁に取り上げられたように、アメリカの野球ファンやメディアは、次のスター候補が登場する「その一瞬」を狙っている。
かつて青木が先頭打者本塁打を放った一瞬や、和田がMLBのスター選手を三振に仕留める映像が競争するように取り上げられ、「今すぐにでも、アメリカに連れて帰りたい選手」として発信されるのである。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO
【動画】3大会ぶりの世界一を狙う侍ジャパン。09年WBC決勝イチローの勝ち越し打&ダルビッシュの鬼スライダーをプレイバック
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それは最終戦で5回4安打6三振と好投した和田毅投手(ソフトバンク)のことだった。後にオリオールズに移籍することになる左腕について、同スカウトは「彼の球に慣れればどうなるかは分からないけど」と前置きして、こう続けるのだった。
「(ライアン・)ハワード(当時フィリーズ)やアンドリュー(・ジョーンズ/当時ブレーブス)ならまだしも、コンタクトの上手いジョー・マウアー(当時ツインズ)からも三振を獲るのは、その才能があるからだと思う」
ハワードはその年、58本塁打を放ってMVPに輝いた若き大砲であり、ジョーンズは現在も殿堂入り有力候補となる万能選手、そして、マウアーはその数年後、捕手では史上最多3度の首位打者タイトルを獲得したスーパースターである。そんな彼らから三振を奪い、4回までパーフェクト投球を見せた左腕MLBスカウトの好奇心をくすぐるのは当たり前だろう。
まだYoutubeもTwitterもなく、トラックマンやホークアイなどの最先端機器もなかった時代のスカウトが、ナマで見たNPBの選手に驚いたというのは、とても自然なことだった。
そういうことが、WBCでもきっと起こる。
06年当時よりもはるかに選手たちの映像は入手しやすくなっているし、今ではMLBの各球団が駐在スカウトを置くことも珍しくなくなっている。データ全盛の時代なので、ナマで見た時のインパクトを過大評価する人はいないだろうが、こう考えてほしい。
侍ジャパンの「抑え候補」と言われている大勢(巨人)の、独特のアングルからの速球が、MLBスカウトの目に留まらないわけがない。
同じく20代前半の戸郷翔征投手(巨人)や、宮城大弥(大阪オリックス)、高橋宏斗(中日)投手らが力のある球を投げ、打者を打ち取る術を見せれば、MLBのスカウトが無視することなどできるわけがない、と。
そういう意味で、WBCには(MLBスカウトにとっての)外国人選手の実力を見定める、「品評会」のような側面もあるのだが、それはスカウトだけではなく、アメリカの野球ファンにとっても同じではないかと思う。
プレミア12やオリンピックで活躍した選手のピッチングやファインプレーがSNSで頻繁に取り上げられたように、アメリカの野球ファンやメディアは、次のスター候補が登場する「その一瞬」を狙っている。
かつて青木が先頭打者本塁打を放った一瞬や、和田がMLBのスター選手を三振に仕留める映像が競争するように取り上げられ、「今すぐにでも、アメリカに連れて帰りたい選手」として発信されるのである。
文●ナガオ勝司
【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、
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