年数にすれば14年ぶりのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)制覇は、日本にとって最重要課題と言っていい。少なくともファンやメディアの間では、「史上最強」とも称される国内外の有力メンバーが集ったチームには、過去にないほど期待が集まっている。
そうしたなかで選手たちから漂うのは、「とにかく野球を楽しもう」という空気だ。
ともすれば、「ぬるいんじゃないか」「本気でやるべきなんじゃないか」と誤解されかねないが、もちろん選手たちは至って真剣だ。しかし、過去大会の侍ジャパンを取り巻いた「絶対に勝たなければいけない」という特有のピリついたムードはない。
そうしたムードを生み出したのは、チーム最年長のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)だ。メジャーリーガー組で唯一、宮崎での春季合宿から参加したベテラン右腕は、自身よりも年下の選手たちと「友だち」のように積極的なコミュニケーションを図った。そしてオフの日には食事会を開くなど、年功序列の壁を取り除いた。
「やっぱり小さいときから楽しそうだから始めたことだと思うし、そこの原点を分かってほしいなと思います。とにかく楽しくやるのが野球だと思います」
そう訴えたダルビッシュは、「お祭りじゃないですけど、本来はそういう風にあるべきだと思うんで。国別の力比べというか」とWBCへの向き合い方を説いてもいる。
興味深かったのは、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)もダルビッシュと同様に「楽しもう」という振る舞いが見えた点だ。3月3日からチームに本格合流を果たした二刀流戦士は、「まずは顔と名前をしっかり覚える」と笑顔で同僚たちとの対話を図った。そこにバリバリのメジャーリーガーが放つ威圧感などなく、むしろ野球少年に近い空気が漂っていた。
【画像】ついに侍Jに合流!大谷翔平&ヌートバーがロッカールームで対面 そして、球界屈指の天才は、「楽しそうですね?」と聞いた取材陣にこう問い返してもいる。
「今ですか? 僕は常に楽しいですよ」
WBCはひとつの負けが重くのしかかる厳しい大会だ。そのなかでメジャーでもトップクラスの実力を誇る二人が異なる形で示した「野球を楽しむ」という姿勢は、球界最高峰の舞台で活躍するうえでの共通項なのかもしれない。
もちろん出る以上は彼らも勝ち負けにこだわるはずだ。だからといって、「負けたら日本に帰れない」「醜態をさらした」という過度なプレッシャーは微塵も感じていない。あくまで彼らには長丁場のレギュラーシーズンという“本当の戦い”が控えているのだ。
考え方は人それぞれだ。しかし、「まずは野球を楽しもうじゃないか」というスタンスは、WBC、ひいては代表戦の新たな捉え方として実に興味深いものがある。
取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)
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そうしたなかで選手たちから漂うのは、「とにかく野球を楽しもう」という空気だ。
ともすれば、「ぬるいんじゃないか」「本気でやるべきなんじゃないか」と誤解されかねないが、もちろん選手たちは至って真剣だ。しかし、過去大会の侍ジャパンを取り巻いた「絶対に勝たなければいけない」という特有のピリついたムードはない。
そうしたムードを生み出したのは、チーム最年長のダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)だ。メジャーリーガー組で唯一、宮崎での春季合宿から参加したベテラン右腕は、自身よりも年下の選手たちと「友だち」のように積極的なコミュニケーションを図った。そしてオフの日には食事会を開くなど、年功序列の壁を取り除いた。
「やっぱり小さいときから楽しそうだから始めたことだと思うし、そこの原点を分かってほしいなと思います。とにかく楽しくやるのが野球だと思います」
そう訴えたダルビッシュは、「お祭りじゃないですけど、本来はそういう風にあるべきだと思うんで。国別の力比べというか」とWBCへの向き合い方を説いてもいる。
興味深かったのは、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)もダルビッシュと同様に「楽しもう」という振る舞いが見えた点だ。3月3日からチームに本格合流を果たした二刀流戦士は、「まずは顔と名前をしっかり覚える」と笑顔で同僚たちとの対話を図った。そこにバリバリのメジャーリーガーが放つ威圧感などなく、むしろ野球少年に近い空気が漂っていた。
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「今ですか? 僕は常に楽しいですよ」
WBCはひとつの負けが重くのしかかる厳しい大会だ。そのなかでメジャーでもトップクラスの実力を誇る二人が異なる形で示した「野球を楽しむ」という姿勢は、球界最高峰の舞台で活躍するうえでの共通項なのかもしれない。
もちろん出る以上は彼らも勝ち負けにこだわるはずだ。だからといって、「負けたら日本に帰れない」「醜態をさらした」という過度なプレッシャーは微塵も感じていない。あくまで彼らには長丁場のレギュラーシーズンという“本当の戦い”が控えているのだ。
考え方は人それぞれだ。しかし、「まずは野球を楽しもうじゃないか」というスタンスは、WBC、ひいては代表戦の新たな捉え方として実に興味深いものがある。
取材・文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)
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