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侍ジャパン

山本由伸は「球速」、佐々木朗希は「制球」――MLBも熱視線を送る2人のWBCでの成功のカギ<SLUGGER>

大南淳【DELTA】

2023.03.09

WBCでは先発ローテーションの一角を担う佐々木と山本。彼らの成功のカギは? 写真:滝川敏之

WBCでは先発ローテーションの一角を担う佐々木と山本。彼らの成功のカギは? 写真:滝川敏之

 第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が3月8日、ついに開幕した。多くのファンが、侍ジャパンの2009年以来となる優勝を期待していることだろう。

 一方で、WBCはメジャー挑戦を目指す選手たちにとっては、自身の実力を示す貴重な舞台でもある。すでにアメリカのスカウトから熱視線を集めている山本由伸(オリックス)、佐々木朗希(ロッテ)がWBCで活躍するためのカギとなる要素とは一体何だろうか?


 セイバーメトリクスでは、投手のスキルについて3つの要素を重視する。「三振を奪う」、「与四球を抑える」、「ゴロを打たせる(=長打を防ぐ)」の3つだ。打球を前に飛ばさせず、無駄な走者を与えず、バットに当てられた場合もリスクの小さいゴロにする--これができれば、自ずと優れた成績を残すことができる。

 まず、三振を奪うスキルを測るために、奪三振割合(全打席に対する奪三振の割合)を見てみよう(表1)。昨季のパ・リーグ平均は20.1%だったが、山本は27.4%、佐々木に至っては35.3%を記録している。

■表1 山本・佐々木「投球の三大要素」比較(2022)            
投手    奪三振割合    与四球割合    ゴロ割合
山本 由伸    27.4%④    5.6%⑳    57.3%①
佐々木 朗希    35.3%①    4.7%⑪    54.8%④
パ・リーグ平均    20.1%    7.9%    45.3%
※◯内の数字は2022年に100イニング以上を投げた50投手中の順位

 佐々木の35.3%という数字は、昨季100イニング以上を投げたNPB50投手の中でトップ。昨季どころか、プロ野球歴代で見ても最高の値だった。江夏豊も野茂英雄もダルビッシュ有も大谷翔平も、この数字には及んでいない(表2)。佐々木はすでに日本プロ野球史上最高の奪三振マシーンなのだ。
■表2 NPB歴代シーズン奪三振割合ランキング            
1    佐々木朗希(2022)    35.3%
2    江夏豊(1968)    31.9%
3    大谷翔平(2015)    31.6%
4    ダルビッシュ有(2011)    31.2%
5    角盈男(1981)    30.5%
6    千賀滉大(2019)    30.19%
7    山本由伸(2020)    30.16%
8    千賀滉大(2020)    29.62%
9    則本昂大(2017)    29.60%
10  伊藤智仁(1993)    29.58%
※シーズン100イニング以上投げた投手を対象

 一方、山本は三振奪取能力では佐々木に一歩譲るものの、ゴロ割合は57.3%で12球団ベスト(100イニング以上)。長打になりにくいゴロを数多く打たせることで、失点を未然に防いでいた。

 そして、両者とも与四球割合も平均より優れている。通常、この3つのスキルはどれか1つでも優れていれば十分、2つ優れていればリーグ有数の投手と評価できる。好投手でも、1つくらいは弱点がある。にもかかわらず、山本、佐々木はなんと3つすべて平均より優れた数値を記録していた(表1)。

 実は、この傾向はダルビッシュ、田中将大、前田健太、大谷など過去にメジャーリーグへ渡った好投手たちとも共通している。山本、佐々木も、そうした一流投手たちの渡米直前に近いレベルにあると言っていいだろう。
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