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侍ジャパン

山本由伸は「球速」、佐々木朗希は「制球」――MLBも熱視線を送る2人のWBCでの成功のカギ<SLUGGER>

大南淳【DELTA】

2023.03.09

 さて、そんな2人がWBCでメジャーの強打者たちを相手に渡り合うためには何が必要なのか。2人が決め球とするスプリットの出来がカギを握りそうだ。

 近年、トラッキングデータの研究により、スプリットが大きな効果を生む条件が主に3つあることが分かってきた。①落差が大きいこと、②速球にスピードがあること、③膝下へと制球されることだ。このうち、①の落差については、変化量が公になっていない現状、2人がどれほどかを具体的に知ることはできない。

 ただ、残る2つはWBCでもポイントになりそうだ。まず、速球のスピードに関しては、佐々木と山本の昨季ストレート平均球速はそれぞれ150キロオーバー。ともに、日本球界では最速クラスの投手である。

 では、MLBのレベルとなると事情は異なる。佐々木の平均158.4キロはMLBでも変わらず最速クラスであるのに対し、山本の151.9キロは平均的だ。日本での山本は、速球とスプリットそれぞれで威力を発揮している。

 しかし、MLBレベルの相手では日本ほど速球が脅威とならない可能性があるのだ。速球とのコンビネーションが重要なスプリットがNPBほど威力を発揮しない可能性は十分にありえる。山本のストレートはMLBレベルの打者にどれほど通用するのか。それによって、スプリットの威力も変わってくるだろう。
 一方で膝下への制球という点で見ると、佐々木と山本の立場は逆転する。ボールゾーンも含め、低めにスプリットが制球された割合を見ると、山本の76.1%に対し、佐々木は63.4%。山本に比べると佐々木のフォークは真ん中や高めに浮く可能性が高かった。2ストライクの場面に限定しても、山本の84.4%に対して佐々木は72.4%である。威力においては佐々木に分があるかもしれないが、高めに浮くリスクは高そうだ。2投手それぞれ、速球のスピードとスプリットの制球には注目である。

 今回のWBCは前回大会から6年と長い年月が空いた。そしてこの6年はただの6年ではない。MLBはこの期間、テクノロジーやデータ分析のバックアップを受けて、目まぐるしいスピードで進歩を遂げた。そんな6年だ。ただ日本球界も置いてけぼりを食らっていたわけではない。状況は変化し、レベルは確実に上がっている。NPBのエース2人は日本野球のレベルを証明できるだろうか。

文●DELTA(@Deltagraphs)

【著者プロフィール】
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』の運営、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。
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