野球にはよくあることだと思いながら、只ならぬまとまりがチーム内に生まれていることを感じずにはいられなかった。

　ライバル・韓国との１次ラウンド第２戦。３回に３点を先行される苦しい展開から逆転勝利を挙げた。エース・ダルビッシュ有が１イニング３失点を喫したが、そこから跳ね返した。チームとして１段階レベルが上がったかのような試合運びだった。

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「野球の試合の難しさみたいなことをずっと感じていたんですけど、とにかく選手たちが自分のできることに集中して本当になんとかしようという思いで一つひとつやっていることがいい流れにつながっている」

　そう語ったのは栗山英樹監督だった。

　野球とはわからないものである。直前の宮崎合宿から圧倒的な存在感を放ったダルビッシュ有が先発して３回表に３失点する劣勢の展開。しかし、すぐさま反撃を開始すると、試合をひっくり返してそのまま圧倒したのである。

　ダルビッシュは乱調ではなかったものの、昨年の最終戦以来の登板ということの試合勘の微妙な狂いは見せた。特に、ヤン・ウィジに先制弾を浴びたボールはインコースに投げ込むはずのスライダーがやや中に入り打者のバットの軌道にあっての手痛い一発だった。

　大エースが打たれたことはチームに影響を及ぼすはずだが、そこからの反撃は見事だった。３回裏の攻撃に入る際のチームの雰囲気には、取り返そうというただならぬ空気そのものだった。

　栗山監督はダルビッシュの失点がもたらしたものはその存在の大きさだと語る

「配球の流れの中で投手が点を取られることって起こるし、そういう流れの中で、ものすごく大きな意味があるんだなと思って試合をやっていました。ダルビッシュさんでも点をとられることがあるんだということで、なんていうか、若い選手たちが思い切っていけるような空気になったように思います。（ダルビッシュは）宮崎合宿から引っ張ってくれてすごく感謝しているし、それも昨日、本人には伝えたんだけど、僕は３点を取られた後に、必ず返してやるからって思ったし、みんなもやってくれると信じていたし、そういうふうに思わせてくれるものが彼にあるんですよ」

　合宿の時からそうだが、ダルビッシュへの一目の置き方は彼がメジャーリーガーであるというよりももっと深いものがある。謙虚に若い選手たちと接する振る舞いや口先だけではなく言動を行動に移すその姿勢など。ダルビッシュの一挙一頭足がチームに与える影響がとてつもなく大きかった。

　宮崎合宿では、ある意味で、影の主役になった宇田川優希（オリックス）がダルビッシュの存在の大きさをこう語っている。

「プレーもそうだし、私生活も。選手としてのレベルの違いを感じます。人間性というか、そういうところのレベルの違いがあります。お手本というか。先発と中継で違うところはありますけど、きょうのピッチングを見てマウンドでのしぐさとかいろんなものを見ていました」