何をやっても絵になる男だ。日本球界が誇る至宝、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)である。
現地3月20日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝で日本代表はメキシコ代表と対戦し、6対5でサヨナラ勝ちを収めた。そのなかで“野球の本場”でも熱視線を集めたワンシーンは、土壇場の9回裏に生まれた。
チームが1点のビハインドを追っていた崖っぷちで、先頭打者を担った大谷は、「どんな打席でも、何点差でもやることは変わらない。投手が誰でも、基本的には変わらないのでシンプルにそのことだけ」を考えて打席に入ると、右中間への二塁打を放つ。そして、ヘルメットを投げ捨てて激走し、二塁上で咆哮を轟かせてダグアウトを鼓舞した。
感情を爆発させた大谷。試合後に「こんなゲームができるのも人生の中でもそうあることじゃない。本当に楽しかった」と振り返った29歳の奮起が呼び水となり、侍ジャパンはドラマチックな勝利を飾ったのである。
栗山英樹監督がイタリア代表との準々決勝後に「野球小僧になりきった時に彼の素晴らしさが出る」と言った通りに、感情的に振る舞い、いわばメンターとしてチームを奮い立たせた大谷。その出色の働きぶりには、“野球の本場”で目の肥えている米メディアの記者たちも脱帽するほかにない。
老舗専門誌『Sports Illustrated』のトム・ベルドゥッチ記者は大谷を「野球界のマイケル・ジョーダン(元NBAスターで、スポーツ界のレジェンド)は、筋骨隆々の肉体から放つ技巧と映画のような華やかさで、過去5年のメジャーリーグでのプレーで見たこともないような表情で二塁に飛び込んだんだ」と気迫のこもった二塁打をレポートし、こうエモーショナルに言葉を記した。
「オオタニは地球上で最もエキサイティングな選手であり、この100年で野球界に起こった最高の存在は、ついにアメリカの地で勝利の瞬間を迎えた。この勝利の瞬間は、日本にとって野球がどのような意味を持つのか、そしてオオタニが優勝を争う姿を見ることが、多くの人々にとってどのような意味を持つのか。そのすべてを物語っていた」
所属するエンジェルスでは優勝争いから見放され、勝てない日々を送ってきた。ゆえにベルドゥッチ記者が指摘したように、大谷のキャリアにとってWBCは重要な意味を持つ。当人もそれは自覚している。二刀流で一大フィーバーを巻き起こしてきた28歳は、メキシコ戦後に充実感を己の言葉に滲ませた。
「テレビゲームをしているような楽しさでもなくて、プレッシャーも込みで。人生の中でそうそう経験できる舞台でもないですし、本当にこういう所でプレーしているという感謝の気持ちを込みの楽しさで。明日試合できるのも楽しみにしていますし。緊張すると思いますけど明日も、それもまた楽しんで」
楽しむ――。そう繰り返した大谷。現地3月21日に迎えるアメリカ代表は、米球界屈指のタレントを揃えた強敵だが、本人の言う通りに楽しみながら、その一挙手一投足を興味深く見守りたい。
構成●THE DIGEST編集部
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チームが1点のビハインドを追っていた崖っぷちで、先頭打者を担った大谷は、「どんな打席でも、何点差でもやることは変わらない。投手が誰でも、基本的には変わらないのでシンプルにそのことだけ」を考えて打席に入ると、右中間への二塁打を放つ。そして、ヘルメットを投げ捨てて激走し、二塁上で咆哮を轟かせてダグアウトを鼓舞した。
感情を爆発させた大谷。試合後に「こんなゲームができるのも人生の中でもそうあることじゃない。本当に楽しかった」と振り返った29歳の奮起が呼び水となり、侍ジャパンはドラマチックな勝利を飾ったのである。
栗山英樹監督がイタリア代表との準々決勝後に「野球小僧になりきった時に彼の素晴らしさが出る」と言った通りに、感情的に振る舞い、いわばメンターとしてチームを奮い立たせた大谷。その出色の働きぶりには、“野球の本場”で目の肥えている米メディアの記者たちも脱帽するほかにない。
老舗専門誌『Sports Illustrated』のトム・ベルドゥッチ記者は大谷を「野球界のマイケル・ジョーダン(元NBAスターで、スポーツ界のレジェンド)は、筋骨隆々の肉体から放つ技巧と映画のような華やかさで、過去5年のメジャーリーグでのプレーで見たこともないような表情で二塁に飛び込んだんだ」と気迫のこもった二塁打をレポートし、こうエモーショナルに言葉を記した。
「オオタニは地球上で最もエキサイティングな選手であり、この100年で野球界に起こった最高の存在は、ついにアメリカの地で勝利の瞬間を迎えた。この勝利の瞬間は、日本にとって野球がどのような意味を持つのか、そしてオオタニが優勝を争う姿を見ることが、多くの人々にとってどのような意味を持つのか。そのすべてを物語っていた」
所属するエンジェルスでは優勝争いから見放され、勝てない日々を送ってきた。ゆえにベルドゥッチ記者が指摘したように、大谷のキャリアにとってWBCは重要な意味を持つ。当人もそれは自覚している。二刀流で一大フィーバーを巻き起こしてきた28歳は、メキシコ戦後に充実感を己の言葉に滲ませた。
「テレビゲームをしているような楽しさでもなくて、プレッシャーも込みで。人生の中でそうそう経験できる舞台でもないですし、本当にこういう所でプレーしているという感謝の気持ちを込みの楽しさで。明日試合できるのも楽しみにしていますし。緊張すると思いますけど明日も、それもまた楽しんで」
楽しむ――。そう繰り返した大谷。現地3月21日に迎えるアメリカ代表は、米球界屈指のタレントを揃えた強敵だが、本人の言う通りに楽しみながら、その一挙手一投足を興味深く見守りたい。
構成●THE DIGEST編集部
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