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プロ野球

ブーイングではなく、あくまで戦いの中で互いを高め合う。森友哉と髙橋光成が見せた野球人の矜持<SLUGGER>

氏原英明

2023.04.04

森は開幕戦がいきなり古巣・西武との対戦となったが、同点弾で早くも“恩返し”に成功。お立ち台にも上がって古巣のファンに挨拶した。写真:産経新聞社

森は開幕戦がいきなり古巣・西武との対戦となったが、同点弾で早くも“恩返し”に成功。お立ち台にも上がって古巣のファンに挨拶した。写真:産経新聞社

 駐車場には、“元バッテリー”の独特な空気の会話が交わされていた。

「まっすぐ速かったわ~」

「いやいや、もう次、スライダーにはタイミング合っていたでしょ」

 3月31日の開幕戦、西武vsオリックス。オリックス勝利の立役者・森友哉が試合後、バスに乗り込もうとした時だった。この日の西武先発・高橋光成を見つけると、2人は歩み寄り、互いの感想を語り合っていた。そこには元チームメイトであることだけでなく、野球人としての濃密な会話が繰り広げられていた。

「やっぱり、ボールを受けるのと打席に入るのとでは全然違いました」

 今季からオリックスにFA移籍した森は、今季初対戦となった西武投手陣の印象をそう振り返った。「どんな球種を持っているのかは分かるけど」という前置きがありながらの言葉だが、森にとって新鮮な対決は、選手として1段階レベルアップする機会になったに違いない。

 FA移籍というと、悪く言われることが多い。
 
「育ててくれたチームへの愛情がない」、「裏切り」、「お金で動いた」などと揶揄され、常に批判の対象になる。だが少なくともこの日、ベルーナドームの駐車場で交わされた高橋と森の会話は、そんな外野の雑音とはまったく関係のない、中身のあるものだった。

 実際、FA移籍にはさまざまなプラス効果が選手にはある。それは森の試合前練習からの姿勢にも見て取れた。
 
 イの一番にグラウンドに出てきてストレッチを始め、バットを振り始める。まるで新人選手のようにがむしゃらに練習する姿だった。筆者は高校時代から森を見てきているが、彼にとってはこの移籍が、マンネリ化しかねなかった自身の行動を変えうるものになる気がしてならなかった。

 試合前のバッティング練習終了後には、裏方やスタッフとともにボール拾いに加わった。新人のようにテキパキ動くというわけではないが、今の彼にとって何が大切かを理解して行動しているのは明らかだった。

 そんな森のバットは、開幕戦から振れていた。

 高橋のコントロールが絶妙で、完璧に捉えることはできなかったが、スウィングの鋭さ、獲物を捉える野生児のような眼でボールを待つアプローチは、怖さを秘めていた。

 そして、試合はまるで森のために用意されたかのようなクライマックスを迎える。
 
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