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プロ野球

10歳差の若手捕手の“提言”も受け入れる柔軟性。超大物助っ人バウアーが見せる日本球界の「革命家」になる可能性

萩原孝弘

2023.04.22

益子との綿密なコミュニケーションのなかで最適解を見出していったバウアー。その柔軟性の高さは周囲を驚かせた。写真:萩原孝弘

益子との綿密なコミュニケーションのなかで最適解を見出していったバウアー。その柔軟性の高さは周囲を驚かせた。写真:萩原孝弘

 トレバー・バウアー。彼は2015年からメジャーリーグで5年連続2桁勝利を挙げ、通算83勝を記録。20年にはサイ・ヤング賞を獲得するなど、現球界で屈指の実力を持つピッチャーのひとりである。

 そんな超大物が紆余曲折を経て、横浜DeNAベイスターズに入団。そして今月16日に行なわれたウエスタン・リーグの西武ライオンズ戦で実戦デビュー。結果は4回(53球)を投げ、被安打4、6奪三振、与四球0と、貫禄の無失点スタートを切った。バウアー本人も「すごく良かった。身体もいい状態でしたし、コントロールも良かった。現時点での100%を出すことができた」と満足げな表情を浮かべるデビュー戦だった。

 無論、実力だけで残した結果ではない。二軍戦とはいえ上々のスタート切った裏には野球への真摯な姿勢と準備、そして日本の野球の特性を見極める洞察力があった。

 この日、バッテリーを組んだ高卒5年目の益子京右は「準備や試合への臨み方がやっぱり他の選手とは違うなと思いました」と超一流の凄さを肌で感じたという。そのうえで試合前に「右バッター、左バッターともに、真っ直ぐとカットボールを軸にしてカウントを整えて、右バッターだったらスライダー、左バッターだったらカーブとスプリットチェンジアップを決め球に使おう」とプランを練り込んだ。

「スライダーの曲がり方はエグかったなと思います」
 
 そう驚きながらも「1巡目からスライダーのイメージがあったのか、2ストライク後に使うとなると付いてきているバッター多かったので、使い所だったり、その前の過程だったりが大事になってくる」とキャッチャーらしい目線で西武打線の傾向を見定めた益子は、メジャーナンバーワンの実績を持つバウアーに「2巡目からは配球を変えていこう」と臆せず提案した。

 すると効果は現れた。3回の1死二、三塁のピンチの場面では、蛭間拓哉と高木渉に対して、益子のサインで「オール真っ直ぐ」で勝負。結果は22歳の若き女房役が「素直に聞いてくれて、そのとおりに投げてくれたので良かったです」と振り返ったように、トラックマン測定で全て150キロ超えのストレートで押し、両バッターとも三球三振でピンチを切り抜けた。

「ホップ成分というか球速以上のものを感じますね。なかなか西武打線も真っ直ぐは強いんですけど、その打線が分かっていてもバットに当たらないストレートでした」

 当たるどころかすることすら許さぬ4シームに、サインを出した女房役も思わず舌を巻いた。

 このシーンもバウアーは「事前に話し合っていた時に、『真っ直ぐ投げるときはベルトから太ももの間にミットを構えてくれ』と。『そこを狙ってベルトから胸の辺りに一番強い球が行くから』と言っていた」という。ここでも念密な準備が功を奏したのである。
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