プロ野球

先を見据えた投手マネジメントに機動力復活、犠打の激減…独自色を次々に打ち出す新井監督のブレない姿勢がチームを変える<SLUGGER>

前原淳

2023.05.03

現役時代の親しみやすいキャラクターはそのままに、着実にチーム改革を進める新井監督。写真:THE DIGEST写真部

 下馬評の低かった広島だが、4月30日までの24試合で12勝12敗、勝率5割でリーグ3位につけている。開幕4連敗から5連勝するなど浮き沈みある星取と比べ、チームには落ち着きがあるように感じられる。今季から新たに指揮を執る新井貴浩新監督の存在による影響だろう。

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 初めて指揮を執るシーズン、目先の勝利を目指しつつ、143試合プラスαを見た視野でマネジメントしている印象が強い。チームづくりを含め、ポストシーズンへの争いが激しさを増すシーズン中盤以降の戦いを見据えているように見える。経験豊富な中堅以上の選手をシーズン序盤で使用していることも、確かな力をつけた若手の台頭を待っている期間のようにも感じられる。

 ブレない姿勢は、采配にも見える。

 監督就任時から明言していた「投手のマネジメント」を開幕早々、実行。先発投手の球数が100球を超えたのは5度しかなく、平均球数は100球を下回る。安定感と層の厚みが増した中継ぎへの手応えもあるだろうが、腹をくくった継投が投手陣全体の相乗効果を生んでいる。
 
 開幕6連勝から4月を16勝12敗で終えた昨季は、開幕直後からトップギアで戦っていた。不安ある中継ぎの負担を減らすため、先発陣が開幕からフル回転。先発4本柱の5月までの平均球数は大瀬良大地が114.6球、九里亜蓮は106.4球、床田寛樹は101.5球、森下暢仁は104.8球。5月20日の中日戦では、5点リードした6回まで98球の大瀬良を7回、8回と続投させ、最終的に121球まで達した登板もあった。

 大瀬良を含め、5月までに4投手で38試合に先発して16勝10敗と6個の貯金をつくった。だが、序盤のフル回転が影響したか、最後までローテーションを守ったのは九里と森下のみ。森下もシーズン終了後に右ヒジのクリーニング手術を行うこととなった。

 先発完投が叫ばれた時代と今は違う。新井監督は球数だけでなく、機を見て登板間隔も空ける対応も取っている。開幕戦から登板3試合で2勝1敗、防御率2.12と滑り出した大瀬良を、4月14日ヤクルト戦の翌日に出場登録抹消。その後、中11日での復帰登板となった同26日の中日戦で不運にも左太腿裏を痛めるアクシデントに見舞われたが、方針が間違っているわけではない。

 13日の中日戦が雨天のため早々に中止が決まると、今度は4試合で2勝0敗、防御率1.73の床田の登板間隔を空けることを決断した。目先の1勝、貯金を溜めることを考えれば、好投続ける投手の出場選手登録抹消を躊躇っても不思議ではない。
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多用しないからこそ、バントのサインが「得点を奪うぞ」というスイッチとなる。