プロ野球

重要なのは「追い込まれてからの打席アプローチ」――ドラフト1位ルーキー・蛭間の昇格でますます激化する西武の外野争いを勝ち抜くには<SLUGGER>

氏原英明

2023.06.22

プロ22年目とあって出場機会は多くない栗山だが、三振を上回る四球を選ぶなど、ベテランらしい優れた打席アプローチを発揮している。写真:THE DIGEST写真部

 昨季はシーズン3位だった西武が、交流戦中に最下位に転落した。

 交流戦が始まった当時は、リーグ4位を狙える位置にもいた。だが、6月10日からの7連敗で、最下位の楽天に追い抜かれてしまったのだ。

 現状の西武は戦力不足かもしれない。源田壮亮と外崎修汰ら主力を外国人のマキノン、ベテランの中村剛也、栗山巧が援護している状況だが、マキノンはともかく、すでに40歳の中村・栗山の両ベテランの力が必要なのは苦しい。

 山川穂高の離脱は想定外とはいえ、現状では今季はおろか来季、さらに今後3年以内に優勝を狙えるようなビジョンが見えない。

 もっとも、未来に希望がないわけではない。外野陣は複数の若手選手たちによるレギュラー争いが熾烈を極めている。

 開幕直後は愛斗がレギュラーの座をつかみかけ、かつ首位打者争いに参戦する勢いだった。その愛斗を鈴木将平が追いかけ、若林楽人、長谷川信哉も後を追うように一軍昇格。長谷川が体調不良で離脱すると、今度は川越誠司も一軍へ。それぞれが自分の居場所を探した。

 4人ともそれぞれ異なる試合でヒーローインタビューに立つなどの活躍を見せた通り、どの選手も能力は高い。だが、いずれもレギュラー定着とまではいかず、まだもがいているというのが偽らざる事実だろう。

 では、彼らには一体、何が足りないのだろうか。レギュラーに定着した源田や、ベテランの栗山らが持ち合わせているものと、若手との違いはどこにあるのだろうか。
 
 そのヒントが垣間見られたのが、6月11日のヤクルト戦だった。

 1勝2敗で負け越したこのカードは、隅田知一郎、髙橋光成、平良海馬といった自慢の先発陣たちが好投しながらもなお競り負けてしまった。

 露呈したのはチャンスでの弱さ。特に目立つのは、追い込まれてからのアプローチだ。

 5回までに3点を先行されたこの日、6回から西武打線が攻勢に出た。2死から鈴木、外崎の連打で1点を返すと、7回には先頭の栗山が四球で出塁、長谷川と古市尊のヒットで満塁として、一気に逆転の好機をつかんだ。

 しかし、8番の平沼翔太が左翼へ犠牲フライを放った後は、打線が続かなかった。9番・若林は三振、1番の源田は四球でつないだものの、2番の鈴木はライトフライで1点止まりだった。

 8、9回も走者を出したがチャンスを拡大することはできず、若いバッターたちがあっさり倒れていったのが印象的だった。

 走者がいない場面では打てるのに、ランナーがいる場面でなかなか結果を残すことができない。あくまで結果論だが、彼らの打席アプローチには、松井稼頭央監督も指摘する特徴が見てとれた。
 
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手本にすべきベテラン栗山のアプローチ