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高校野球

東海大相模で一時代を築いたレジェンド指揮官が、新天地・創志学園で取り組む“心の体力”の育て方とは?「全力でやることが未来を創るんだよ」

大友良行

2023.07.10

東海大相模を4度の全国制覇に導いた門馬監督。新天地の創志学園で指揮を執る。写真:大友良行

東海大相模を4度の全国制覇に導いた門馬監督。新天地の創志学園で指揮を執る。写真:大友良行

 まだ夜が明けきらない午前5時。野球部寮に向かい、選手たちのために配膳をする。慣れないぎこちない手つきで茶碗に白飯を丁寧に盛り付ける。隣ではコーチが味噌汁を注ぐ。

 昨秋、監督就任した当時の日課の一つだった配膳。今年の6月まで続けたという。
「選手たちには、私たちが食堂を動き回るのを見て、何かを感じとってほしかったのです。もしかしたら、何も感じない子もいるでしょう。でもそれも答えです。何もかにも、すべて教えるということではないんです」
 そう語るのは、創志学園(岡山)の門馬敬治新監督(54歳)。まずは心構えからの第一歩に取り組んだ。
 
 1999年から22年間、東海大相模高(神奈川)の指導にあたり春夏甲子園出場計12回。チームにスピード感を植え付ける『アグレッシブ・ベースボール』を提唱。通算4度の全国制覇を成し遂げた高校野球界のレジェンドだ。

 2021年夏に体調不良のため相模を退任。2年間、外から高校野球を見ているうちにもう一度チャレンジしてみたいという気持ちが再燃。「お話をいただいていた創志学園で、社会科教諭兼監督としてお世話になることとなりました。あの素晴らしい夢を選手とともに追いかけたい」と就任会見で想いを述べた。

 しかしスタートは、思うようにいかなかった。就任直後に迎えたセンバツ甲子園がかかる昨秋の中国大会では、光(山口)相手に4点差をひっくり返されて5対4で敗れ、ベスト8止まり。今春の県大会準々決勝でもおかやま山陽高に2点差をつけたものの8回に追いつかれ、延長タイブレーク11回に3対2のサヨナラ負け。

 苦渋の洗礼を味わうこととなった。なぜ勝ちきれなかったのか。

「技術力はあるがすべてにおいて、まだまだ“心の体力”がないと感じています。よく相模との違いを聞かれますが、相模には恩師である原貢監督(三池工と相模で計2度の全国制覇。9度も甲子園に出場して神奈川の勢力図を塗り替えた名将。巨人原辰徳監督の実父。菅野智之投手が孫にあたる)が創り上げた源流がありました。選手たちも、どう対応すれば結果につながるかがわかっていた。甲子園だけで頑張ろうとしているわけではなくて、甲子園に出るまでの生活とか、グラウンドでの練習対応を選手たちにわからせないと結果には繋がらないと思います。つまり普段の生活と練習と試合のすべてが大事なんです。この三点を、本気でやっていけばプレーにも力がついてきます」と長い経験から得た持論を熱く展開する。

 例えば内野ゴロでセーフかアウトかの時、足が速いからセーフになるのではなくて、走り切るからセーフになる。でも走ろうと思っても走れないならアウトになってしまう。

 特に夏の大会は、暑さと体力が勝負。

 挟殺プレーでも、頭ではなく体が覚えるまで一日中かかっても続けるべきだ、と言う。
「良い結果を出すために、今を全力で取り組んでいますか? 全力でやることが君たちの未来を創っていくんだよ。頑張ろうの気持ちがあっても、あの暑さの中では疲れで体が動かなくなることもある。つい公式戦の結果だけを見てしまいがちだが、こういう基本的なことを本気でやっていけば力はつくはずです」と語る。

「そこを全力でサポートするのが我々大人たちの役割だと思っています」。

 夏の県大会初采配となる門馬野球が、再び『甲子園への道』を目指して、その第一歩を踏み出した。

取材・文●大友良行
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