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エンジェルス以上の大型補強を演じた地区ライバル、まさかの現状維持にGM解任論が噴出したヤンキース――2023年トレード・デッドラインの「勝ち組」「負け組」<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.08.03

シャーザー(右)らを大型補強したレンジャーズだけでなく、シャーザー本人も勝ち組と言えそう。一方、ヤンキースは「キャッシュマンGM(左)を解任せよ」との声もあるほどの惨状に……。(C)Getty Images

 現地8月1日、MLBのトレード・デッドラインが終結した。補強ポイントを効果的に埋められたチームもあれば、ほとんど何もできなかった球団もある。ここでは、今夏移籍市場の勝ち組と負け組をそれぞれ紹介しよう。

【勝ち組】
●レンジャーズ

 21年、22年オフと2年続けて大補強を展開し、今季は開幕から快調に首位を走っていたレンジャーズ。7年ぶりの地区優勝、そして1961年の球団創設以来初のワールドシリーズ優勝へ向け、デッドライン・トレードでもアクセル全開で突っ走った。

 まず6月30日、豪腕チャップマンを獲得したのを皮切りに、ジェイコブ・デグロムがトミー・ジョン手術で離脱した先発陣にはサイ・ヤング賞3度の大投手シャーザーと実力派左腕モンゴメリーを補強。故障中のネイサン・イオバルディが帰ってくれば、先発陣の陣容はリーグでもトップクラスになる。さらにデッドライン当日には、正捕手ジョナ・ハイムの故障離脱を受けて球界トップクラスのフレーミング能力を誇るヘッジズも加えた。

 地区2位のアストロズが猛烈な勢いで追い上げ、エンジェルスも積極的に動く中、球団フロントの優勝への本気度がひしひしと伝わってくる補強に選手たちも勇気づけられているに違いない。
 
●マーリンズ

 MLBきってのドケチ球団で、トレード市場ではもっぱら「売り手」に回ることが多いマーリンズだが、今年は違った。

 まず、7月28日にメッツからデビッド・ロバートソンを獲得してクローザー不在という問題を解消。さらにデッドライン当日の8月1日には、ア・リーグ3位の25本塁打を放っていたジェイク・バーガーをホワイトソックスから、さらに19年に37本塁打を放った実績もあるベルも加えて、もう一つの課題だった打線のパワー不足も解決した。人気者ジャズ・チゾムJr.も故障から復帰し、短縮シーズンを除けば実に2003年以来というプレーオフ進出へ向けて、着実に前進した。

 一方、放出した若手選手でMLB公式のプロスペクト・ランキング球団トップ5に入っていた選手は、バーガーとの交換で放出した左腕投手のジェイク・イーダーくらい。ただでさえ投手が潤沢なファーム組織からはあまり犠牲を払っていないのも大きい。

●マックス・シャーザー&ジャスティン・バーランダー

 ともに過去サイ・ヤング賞を3度受賞し、史上最高年俸の4333.3万ドルを得ているレジェンド2人だが、シャーザーは現在39歳で、バーランダーは40歳。残された現役生活は決して長くはない。にもかかわらず、2人が所属していたメッツから開幕から思わぬ低迷。シャーザーが明かしたところによると、メッツのビリー・エプラーGMは「来年(24年)は大補強には動かず、照準は25~26年」と語っていたとのこと。それが事実ならば、メッツからの移籍は2人にとってもむしろ渡りに船だったのではないか。

 シャーザーは7年ぶりの地区優勝へ驀進するレンジャーズへ、バーランダーも昨季まで在籍していたアストロズへの移籍が実現。同地区でしのぎを削るライバルに分かれて戦うことになった。シャーザーは19年にナショナルズで、バーランダーは17年と22年にアストロズでそれぞれワールドチャンピオンを経験。果たして残されたキャリアで「頂点の夢よもう一度」との希望は叶うだろうか。
 
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両リーグの名門がまさかの負け組に……