ジワジワ効いてくる。

　豪快にスウィングしてくる浜松開誠館の打棒はイニングを追うごとに相手の脅威となった。

「相手打線は初回から振ってきていて、甘いところに投げられないなと思って、力んでしまった」

　東海大星翔のエース・玉木稜真の証言だ。

　試合が大きく動いたのは、東海大星翔の１点リードでむかえた５回裏だった。

　２死一塁から浜松開誠館の４番打者・新妻恭介がスライダーを真芯で捉えた打球は、左翼スタンドに突き刺さった。

　迷いのないフルスウィング。これは、チームのスタイルによるものだ。浜松開誠館は佐野心監督によってたくさんのことが許容されている。
  　たとえば、新妻のこの打席。佐野監督は「ホームランを狙っていい」と本人に伝えていた。

　高校野球の監督の指示といえば、「つなげ」「進塁打だ」「監督の指示通りに」というのが通例だ。だが新妻によれば、佐野監督の自由な指示は「（３番の）本多（駿）や僕にはよくある」ことらしい。こうした自由奔放さにこそ、浜松開誠館の強さなのだ

　ここ数年の高校球児のトレンドにならうかのように、浜松開誠館ナインのヘアスタイルは自由だ。もともとは坊主だったが、３年生が１年の秋くらいの時にルールが変わった。

　２番を打つ廣崎蓮はいう。

「１年生から伸ばしていいということになりました。監督から『浜松開誠館は自主性を重んじてやっているので、学校の校則を破らなければ自分の好きなようにしていい』と。それから髪を伸ばしています。自由なこともやりすぎないようにしています」

　自由には、責任の伴うものそうでないものとがあるが、浜松開誠館は前者だ。

　選手たちに責任を委ねることで、考えて行動に移せるというわけだ。