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メジャー未昇格のまま引退? 2人の元ドラフト全体1位指名投手が復活する日は来るのか

宇根夏樹

2019.12.13

名門スタンフォード大のエースとして活躍したアッペル。即戦力として期待されていたのだが……(C)Getty Images

 ドラフト全体1位で指名されながら、メジャーデビューできなかった選手は、スティーブン・チルコット(1966年/メッツ)とブライアン・テイラー(91年/ヤンキース)の2人しかいない。けれども、その人数は一気に倍増するかもしれない。

 2012~14年のドラフトは、アストロズが3年続けて全体1位の指名権を持っていた。その1人目であるカルロス・コレアは、メジャー1年目の15年に新人王を受賞し、以降も正遊撃手として活躍している。ただ、13年のマーク・アッペルと14年のブレイディ・エイケンの両投手は、メジャーデビューすらしていない。しかも、アッペルはフィリーズ、エイケンはインディアンスに籍を置いているものの、引退に近い状態だ。

 昨年の春、アッペルは「期間未定の休息」に入った。エイケンもそれに続くようだ。先日、MLB.comは「元1巡目指名のブレイディ・エイケンがベースボールから離れる。スプリング・トレーニングに戻ってくるかどうかインディアンスは分かっていない」とツイートした。
 
 実は、エイケンがプロ入りした時のドラフト順位は、全体1位ではなかった。14年にアストロズからトップピックで指名され、一度は契約金650万ドルで合意に達したものの、身体検査で左ヒジの故障が発覚。アストロズが金額を下げたため、入団には至らなかった。エイケンはIMGアカデミーを経て、翌年のドラフト全体17位でインディアンスに契約金250万ドルで入団した。

 アッペルもエイケンも、故障に泣かされただけでなく、マイナーで結果も残せていない。それでも、現在の年齢はアッペルが28歳、エイケンは23歳だ。特に、エイケンはここから再スタートを切っても、決して遅くはない。

 04年にパドレスから全体1位指名されたマット・ブッシュ(現レンジャーズ)の例もある。ブッシュは30歳でメジャーデビューし、そこから2年続けて50試合以上に登板した。彼の場合、飲酒にまつわる数々のトラブル(轢き逃げ事故で3年以上も刑務所に収監されたこともある)を経て、遊撃手から投手に転向した後にメジャーへ上がったので事情は違うが、自らの意思で球界を離れた後、戻ってきてメジャーリーガーとなった元トップ・プロスペクトもいる。