プロ野球

若手左腕を“晒し者”にした立浪監督の決断は本当にやむを得なかったのか?ブルペンの稼働状況から改めて検証する<SLUGGER>

SLUGGER編集部

2023.08.27

栄光に彩られた現役時代から一転、指揮官としては大苦戦中の立浪監督。写真:THE DIGEST写真部

"令和の米騒動"に続いて、中日の立浪和義監督がまだ物議を醸している。

 問題となっているのは、8月25日のDeNA戦での近藤廉の起用だ。2対8とリードされた9回にマウンドに上がった近藤はいきなり3連打を食らって2点を献上。その後、2人続けて打ち取ったが、そこからまた崩れる。四球、ヒット、二塁打、四球、四球、二塁打……DeNAの選手が次々と出塁し、得点していく。だが、いつまで経っても立浪監督は動かない。

 結果、8安打と5つの与四死球を献上し、10失点。1イニング62球はプロ野球歴代ワースト2位の不名誉記録となってしまった。まるで晒し者のようにマウンドに放置された近藤には同情の声が、そして立浪監督には轟々たる非難が集まった。

 試合後、立浪監督は近藤の"晒し投げ"について「勝ちパターン(の投手)しか残っていなかった」と説明。「(近藤には)酷なことをしました」とも語った。

確かに、大量リードされた状況で登板した投手が不調でも投げ続けることはよくある。大勢が決した試合で他の投手に負担をかけないための措置で、メジャーリーグでは控え野手がマウンドに上がることも珍しくない。
 では、今回の立浪監督(と落合英二ヘッドコーチ)の判断は本当にやむを得ないものだったのか。あえて中日首脳陣の立場から考えてみよう。

 まず、立浪監督が試合後の会見で語った「勝ちパターン」の投手たちとは、具体的には以下の5人だ。

フェリス 2試合 防御率0.00
齋藤綱記 17試合 防御率0.56
藤嶋健人 41試合 防御率1.45
松山晋也 19試合 防御率1.40
マルティネス 38試合 防御率0.24

 来日間もないフェリス以外の4人は、15試合以上に投げて防御率1点台以下と安定感抜群。確かに、大差で負けている試合ではつぎ込みたくないという心情はよく理解できる。

 一方、この5人の登板間隔はどうだったか。直近の登板と球数を振り返ってみよう。

フェリス 8/23 13球
齋藤綱記 8/22 21球
藤嶋健人 8/23 14球
松山晋也 8/22 13球
マルティネス 8/16 13球

 フェリスと藤嶋は22、23日と続けて投げていたが、24日は試合自体がなかったため、連投中の投手は一人もいなかった。また、絶対的守護神のマルティネスはチームが勝ち星から遠ざかっていたこともあり、10日近く登板していない状況だった。つまり、近藤に何か"異変"が起きた時には、無理なく対応できる状態だったことになる。
 
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