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最後までプレーオフを争い、日本人右打者初の20本塁打も記録。それでも「悔しいシーズン」と表現した鈴木誠也の負けん気<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.10.07

悔しい経験も含め、鈴木誠也のメジャー2年目は収穫の大きなシーズンだった。(C)Getty Images

 10月1日、敵地ミルウォーキーで行われたブルワーズとの今季最終戦。ラインアップに名前がなかったのは、彼だけではなかった。コディー・ベリンジャー、イアン・ハップ、ニコ・ホーナー、ダンズビー・スワンソン、ヤン・ゴームズといった「2023年カブスの主力」が、今年最後の試合をベンチから見届けることになった。

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 それはマーリンズが前夜、ワイルドカード3位でポストシーズン進出を決め、カブスの激闘が終わってしまったからだ。

「悔しいシーズンになったかな、と思います。ポストシーズンを目指してやっていたんで、そこを逃したのが悔しい」

 そう言ったのは、鈴木誠也だった。前夜の試合後からこの日の試合前までに、ほとんどすべての主力選手が、わずか1ゲーム差で届かなかったポストシーズンについて、話すことになった。鈴木もその一人で、試合前、日米の報道陣がダグアウトで彼を囲んだ。

「去年よりも凄く良いチームになって、より上を目指せるチームになったと思う。(来年への)課題っていうのは個人、個人が分かっていると思うし、より明確になって『こういうことをやれば上に行けた』っていうのは皆、分かっている。もっと上を目指してやっていける」

 説明責任=Accountabilityという言葉がある。

 昨今の日本のニュースを見ていると、それはスキャンダルに苛まれるアイドル事務所や、会計上の問題が発見された政治家の釈明会見を意味するように思えるが、スポーツ界、とりわけベースボールのように毎日試合がある競技では、日常的に果たされている。
 監督が試合に勝てなかった理由を語るのも説明責任であり、ピッチャーが決勝打を打たれた理由を語るのも説明責任というやつだろう。鈴木の場合、メジャーリーグ2年目の今年は「チームの主力選手として」の説明責任を果たすことになった。

「来年はより期待されると思います。そこは自分でも分かってますし、目標をもっと高くしてやりたいと思います。期待されていた分、最後のああいうミスっていうのは、やっぱりガッカリさせるものでもあったので、そういったところももっと反省して、次はああいうミスがないように、皆をもっと喜ばせられるように頑張りたいと思います」

 最後の「ああいうミス」。

 すでに日本でも伝えられていることだろうが、9月26日、敵地でのブレーブス戦で、8回二死二、三塁から右中間に飛んだ打球を、外野手にとても評判の悪いLED照明が目に入って見失い、逆転打にしてしまった決勝エラーのことだ。

 あの晩も鈴木は、説明責任を果たした。

――8回の決勝エラーは、なにがあった?
何があったもなにも、あの通りです。

――照明が目に入ったのか?
それもありますけど、ああいうライトっていうのは、そういう対策を持って日本からシーズンを通してやってきていたので、言い訳にはならない。

――最後の最後まで見えていたようだった。
最初は見えてましたね。ずっと見えていて、あっ(打球が照明に)被るな、被るなと思いながら走っていたんですけど、最後のギリギリぐらいで被ったんで、捕ったと思ったんですけど、ああいう形になってしまった。
 
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