専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
MLB

最後までプレーオフを争い、日本人右打者初の20本塁打も記録。それでも「悔しいシーズン」と表現した鈴木誠也の負けん気<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.10.07

 カブスも、鈴木の代役でスタメンに名を連ねたマイク・トークマン外野手や、ニック・マドリガル内野手らが、鈴木の穴を埋めて余りある活躍を見せた。

 ロス監督がシーズン中にも関わらず、鈴木に「スタメン外し」という荒療治という決断を下すことができたのも、その結果、鈴木がスタメン復帰後の47試合で、打率.356、OPS1.086、11本塁打、37打点という好成績を残せたのも、カブスがチームとしてしっかり機能していたからである。

「僕が調子悪い時は助けてもらいましたし、皆が良くない時はなんとか助けてあげられるようにと思ってやっていたし、凄く良いチームメイトでした」

 確かなことは、打率が.240台まで落ちようが、1ヵ月以上もホームランが打てなかろうが、鈴木が諦めることだけはせず、自分の打撃について考え抜いたということだ。

「この舞台はそんなに簡単なものではないですし、より難しいものにはなってきますけど、自分を成長させるためにここに来ましたし、自分が苦しむことはある程度、頭には入っていた。後半の2ヵ月だけですけど、少しでもその壁を乗り越えられたってのは自信になりましたし、また、しっかりやっていこうというモチベーションにもなった」

 
 その結果が、すべての部門で昨季を上回った今季の成績だったのは、間違いないだろう。

打率    .262→.285
本塁打    14→20
打点    46→74
OPS    .770→.842

  2006年、城島健司(当時マリナーズ)と、井口資仁(当時ホワイトソックス)が残した右打者のシーズンMLB最多記録だった18本塁打を、2本更新しての同20本塁打について、鈴木は「どうでもいいです」と答えている。

 それは以前のコラムに書いたように、日本人初の本塁打王に輝いた大谷翔平という、とてつもない存在がいるからだ。

大谷翔平、藤浪晋太郎、そして鈴木誠也——1994年生まれの3人は試練を乗り越え、ただひた向きに前へ前へと進み続ける<SLUGGER>

「もちろん(彼は)特別かも知れないですけど、日本人でもああいうところまで行けるんだっていうのは、翔平が示してくれたんで、より目標を高く、戦っていきたいなと思う」

 そして、それは鈴木の場合、チームの成長とともにあるのかも知れない。

「ある程度、勝ち方も分かりましたし、こういう風な試合ができれば必然的に順位も良いところに行くっていうのは分かりましたし、去年とはまた違った、良い勉強になったシーズンだったと思います」

“ヒリヒリした戦い”の結末は苦かったが、それは彼にとって、次なるチャプターへの扉を開く、とても大切なプロセスになっているようだ――。

文●ナガオ勝司

【著者プロフィール】
シカゴ郊外在住のフリーランスライター。'97年に渡米し、アイオワ州のマイナーリーグ球団で取材活動を始め、ロードアイランド州に転居した'01年からはメジャーリーグが主な取材現場になるも、リトルリーグや女子サッカー、F1GPやフェンシングなど多岐に渡る。'08年より全米野球記者協会会員となり、現在は米野球殿堂の投票資格を有する。日米で職歴多数。私見ツイッター@KATNGO

【山本萩子のMLBプレーオフ至上主義!│後編】10月の大舞台で輝いてこそ真のスーパースター。今年の注目選手は?<SLUGGER>

【MLBプレーオフ展望:ア・リーグ】大躍進オリオールズよりも10月の舞台で強さを発揮するアストロズがリーグ制覇最右翼か<SLUGGER>

「メジャー史上最高の成績だ!」NY紙が大谷翔平に畏敬の念。投打で“異次元すぎる”今季を脚光「史上最も注目に値する個人シーズン」

 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号