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大音量の歓声と罵声——球界最高のホームフィールド・アドバンテージを誇るフィリーズは“最強”ブレーブスを倒せるか<SLUGGER>

杉浦大介

2023.10.07

熱狂的な声援をバックにマーリンズを蹴散らしたフィリーズ。この勢いで世界一最右翼ブレーブスも倒せるか。(C)Getty Images

 アメリカ広しといえど、10月のシチズンズバンク・パーク(フィラデルフィア)ほど"ホームフィールド・アドバンテージ"を感じさせる場所は他にほとんど存在しない。

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 例年、プレーオフの季節になると、この球場には大音量の歓声と罵声が飛び交い、尋常ではない雰囲気に包まれる。満員のファンが一斉にタオルを振り回し、約4万5000人が一体となる光景は壮観だ。

「(シーズン中より球速が上がった理由は)分からないけど、雰囲気やアドレナリンのおかげかな。ブルペンに行く時に大歓声を浴びて鳥肌が立ったよ」

 マーリンズとのワイルドカード・シリーズ第1戦に先発したフィリーズのザック・ウィーラーはそう述べていたが、実際にこの非日常的空間に地元選手たちを鼓舞する効果があるのは間違いないだろう。

 熱狂的なフィラデルフィアンたちの前で、ワイルドカード・シリーズ中のフィリーズは素晴らしいプレーを披露した。合計スコアは2試合で11対2という圧勝劇。マーリンズに2連勝であっさりと決着をつける最大の要因になったのは、ウィーラー、アーロン・ノラという先発2本柱の見事な投球だった。

 初戦ではウィーラーが7回途中まで5安打1失点に抑え、降板時には盛大なスタンディング・オベーションを浴びた。33歳のエースはこれでポストシーズン通算7試合に登板し、防御率2.55。特にシリーズ第1戦は3度の先発で通算防御率0.45(20イニングで1失点)と圧倒的な強さを誇り、緊張感も高まる短期決戦において頼れる存在となっている。
 第2戦ではウィーラーからバトンを受け継いだノラが7回を3安打無失点とこちらも完璧な投球で魅せた。今季は防御率4.46と苦しんだ30歳の右腕だったが、この2年、4試合(シーズン2度、ワイルドカードシリーズ2度)のエリミネーション・ゲーム(負けたら終わりの試合)では27イニングで1失点、防御率0.33。その勝負強さゆえに頼もしい存在になっている。

 「ウィーラーとノラに夢の中でうなされそうだ。去年、セントルイスでもやられた。メジャーでも最高級のコンビだよ」

 昨季、カーディナルスのベンチコーチとして臨んだワイルドカード・シリーズでは同じくウィーラー、ノラに合計13イニング無失点で敗れたマーリンズのスキップ・シューマッカー監督は呆れたように語っていた。

 2本柱のおかげで主導権をつかんだフィリーズは、ブルペンも好調で、2試合で許した四球は1のみ。打線もブライス・ハーパーは1安打のみ、カイル・シュワーバーはまだ本塁打ゼロながら、ブライソン・ストット、アレック・ボームらの働きで合計11得点をマークした。

 サンディ・アルカンタラ、ユーリー・ペレスという2人の先発の不在が痛かったマーリンズを寄せつけなかった強さは貫禄十分。2年連続ワールドシリーズ進出を目指すチームらしく、役者の違いを感じさせる勝ち方だった。