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MLB

大谷翔平はフィリーズでプレーするべきだ!――ブライス・ハーパーとフィラデルフィアの幸福な関係を見て思うこと<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.10.16

ハーパーはフィリーを愛し、フィリーはハーパーを愛する。大谷もこんな熱い街でプレーしてほしい。(C)Getty Images

ハーパーはフィリーを愛し、フィリーはハーパーを愛する。大谷もこんな熱い街でプレーしてほしい。(C)Getty Images

 大谷翔平は、フィラデルフィア・フィリーズでプレーすべきだ。

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 チーム予算上も、チーム編成上もあり得ない話なのだが、大谷はもうこれ以上、「もしかしたら勝てるかも」などという中途半端な補強をするチームでプレーしてはならない。「大谷が活躍すればそれでいい」などと考えるファンの前でプレーすべきじゃない。

 大谷はフィリーズのように「何が何でも勝つ」ことを目指すチームでプレーすべきであり、「相手が誰だろうが関係ねぇ。ぶっ飛ばしてやる」という気持ちを持つファンの前で、優勝を目指してプレーすべきなのだ。

 10月11日、ナショナル・リーグ地区シリーズ第3戦、アトランタ・ブレーブスをホームに迎えたフィラデルフィアの地元ファンはその、「ぶっ飛ばしてやるよ」という雰囲気を、試合の最初から最後まで貫き通した。

 一回表、先発アーロン・ノラが二死一、二塁のピンチにブレーブスの5番マーセル・オズーナを見逃し三振に仕留めただけで、「何が何でも勝つ」というチームの士気は上がった。

 1点を先制された3回、その裏の先頭打者、7番ニック・カステヤノスが左翼席に同点ソロ本塁打を放つと、大きな声援が飛び交い、2死一、三塁から3番のブライス・ハーパーが右翼二階席に勝ち越し3ラン本塁打を叩き込むと、4万5千人を超える超満員のボールパークが全体が「相手が誰だろうと関係ねぇ。ぶっ飛ばしててやる」という気持ちを共有したようだった。
 10対2で勝った試合後、ハーパーは「それが俺たちのファンなんだ」と言った。

「(ベンチに向かう)トンネルを抜けて試合に向かう時、俺はただ、嬉しくなって笑っている。分かるだろ? (選手なら)誰もがそう感じている。俺はここを愛しているし、(本拠地シチズンズ・)バンクに来て、そういうファンの前でプレーすることは何にも替え難いことなんだよ。ブルーカラー・メンタリティ……毎日、タフに戦っている。鳥肌が立つよ。アツくなるんだ」

「Blue collar mentality」という言葉に心を奪われた。

 作業服が青系の色であることを語源とする言葉で、典型的には製造業や建設業、あるいは農業や漁業などの現場作業に従事する肉体労働者を指す概念だ。対義語となっているWhite color=ホワイトカラー(技術・開発や事務や営業販売等の労働者を差す)も多いが、シルベスター・スタローン主演の映画『ロッキー』の第1作目でも描かれているように、フィラデルフィアは「打たれ強いタフな性格でなければ、生き残っていけない街」というイメージがある。

 ネバダ州ラスベガス出身のハーパーは、生来のフィラデルフィアンではないが、普段から彼のプレーにはそんなタフネスが滲み出ている。

 地区シリーズ第2戦でもそんな姿があった。救援投手陣が崩れて5対4と逆転された9回、先頭打者として、四球で出塁したハーパーは、1死からニック・カステヤノスが放ったセンター後方の大飛球で一気にホームを狙い、二塁を過ぎたところまでオーバーランしていたため、飛び上がって好捕したブレーブスのマイケル・ハリス中堅手からの中継プレーに一塁で刺され、試合終了のダブルプレーとなった。

 試合後、ブレーブスのロッカーに雪崩れ込んだメディアの数人が、オーランド・アルシア遊撃手が「Atta boy, Harper!」と大声を上げて叫び、喜びを表現したところを目撃した。
 
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