プロ野球

スタメンを組む段階で岡田采配に先手を打った中嶋監督。オリックスの逆王手の裏に見る両監督の駆け引き<SLUGGER>

氏原英明

2023.11.05

甲子園3連戦では岡田采配の方が一歩先んじていたが、再び京セラに戻っていきなり中嶋監督(写真)の策がズバリ。勝負は最終戦に持ち越された。写真:野口航志

 シリーズ第4戦終了後の阪神・岡田彰布監督の言葉が頭から離れなかった。

「采配って外れた時の大きさのほうを考えたら、なかなか出せんよ。そんな簡単にスクイズとか、できないって。短期決戦では余計に。それで一気に流れもいってしまうわけやからな。一、三塁やからセーフティースクイズとかって、できへんて」

 短期決戦の流れの怖さ。それを考えた時、指揮官の判断が鈍くなるのだろうというのが、話を聞いて受けた印象だ。

 だとするならば、日本シリーズにおいて指揮官ができることは何か。それはオーダーを変えることしかないのではないか。

 日本シリーズ第6戦はまさにそこがポイントになった。

「3番・紅林弘太郎」

 オリックスのスタメンを見た時、その意図を見抜くことはできなかった。
 
 確かに、このシリーズでの紅林はボールが見えている。しかし、手首を痛めていることと、怖さで言えば森友哉、あるいはスウィッチヒッターの特性がもろに出ているマーウィン・ゴンザレスの方がいいのではないかと想像してしまったのだ。

 シリーズ第1戦と同じ先発投手で始まったこの試合は、オリックス・山本由伸、阪神・村上頌樹の両投手が、ともに、不安定な立ち上がりからスタートした。その証拠に、2回が終わった時のアウトのほとんどが三振かフライアウトだったのだ。

 試合は2回から早速動いたが、これは両投手の球がやや高めに浮いていたことによるものだった。

 まず阪神は、5番・ノイジーのライトへの本塁打で1点を先制。その裏のオリックスも、センター前ヒットで出塁したゴンザレスを一塁において、7番・杉本裕太郎が放ったのは天井にぶち当たる高いフライ。京セラドームのレギュレーションでは二塁打と判定されたその打球は甲子園だったら、おそらくファールになっていただろう。投手の球の高さがここに出ていた。そして一死後、9番・若月健矢がライト前に適時打を放ち同点。1番・中川圭太も左翼に犠飛を打ち上げ、オリックスが勝ち越した。

 両先発はどう建て直していくのだろう。

 おそらくスーパーエースの山本は前回のように打ち込まれない限り、交代はないだろう。しかし、阪神は岡田監督の采配によって、また流れを変えてくることは予想できた。事実、ブルペンには第2戦と第3戦にそれぞれ先発した西勇輝、伊藤将司が入っていた。

 膠着状態から試合が動いたのは5回裏だった。阪神の先発・村上の制球は高いままだったが、岡田監督は動くことはなかった。その時に、中嶋監督のちょっとした狙いに気付いた。
 
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第5戦と第6戦でオリックスのオーダーは何が変わった?