紅林の本塁打でオリックスは３点をリードした。これは先発の山本には大きすぎるプレゼントだった。５回からギアを上げていた山本は得点直後のイニングを三者凡退に抑えてリズムを作ると、７回は２死からピンチを招く３番・森下翔太を二飛に抑えた。

　８回は２三振を奪って、独壇場の三者凡退。９回は1人の走者を出したものの、最後は近本光司を二塁ゴロに抑えて完投勝ちしたのだった。
　
　山本のピッチングは最後は圧巻だったし、もちろん村上を打ち崩した打線も評価に値する。

　ただ、シリーズも大詰めと言う状況で、村上の交代に動くことは、これまでの岡田監督の采配なら大いにありえた。しかし、一歩出遅れたのは中嶋監督のオーダー勝ちと見ていい。

「やっちゃいけないことをやったなと思ったけど、なかなかいい仕事をしましたね」

　中嶋聡監督は試合後、３番の紅林起用についてそう振り返ったそうだ。多くを語らない指揮官だが、この日は手応えを感じたに違いない。指揮官同士が作戦面でなかなか動き出せない中、オーダーを組む段階から先手を打って、オリックスが白星。勝敗をタイに戻したのは非常に興味深い試合だったと言える。
  　一方、第７戦のことを考えて余分に投手を注ぎ込まなかった岡田采配も見事だった。しかし、指揮官はそのことを問われるときっぱりと否定した。

「西（の登板は）休ませるわけじゃなく勝負に行ってる。短期決戦で休ませることが目的の起用なんかあるわけないよ。そののために、ベンチに入れているんやから。（明日登板の）青柳（晃洋）は投げる以上は抑えに行くだけやんか。期待って、離脱した時期があったけど、シーズンで投げてきた投手やからな。登板が明日になっただけやから」

　岡田監督は第７戦で青柳を先発に立てるそうだ。

　このシリーズ初登板の右腕が、今度はオリックス打線を混乱に陥れることはできるのか。また、青柳の先発を見て、中嶋監督も次の手を考えてくるか。明日の勝敗の分かれ目となるかもしれない。

　新旧、考え方がまったく異なる指揮官同士の戦いは、いよいよ最終ラウンドで決着する。

文●氏原英明

【著者プロフィール】うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設。このほど、パ・リーグ特化のWEBマガジン「PLジャーナル限界突パ」を創刊した。

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