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気候条件やデーゲームの多さ、チームの戦力...総額6億ドルを用意しているカブスは大谷翔平にとって最適解」のチームなのか?<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.11.29

ドジャース、ジャイアンツも含め多くの球団が争奪戦に参加する中、大谷が選択するのは一体どのチームか。(C)Getty Images

 シカゴ郊外に住んでいる関係で、近所のカブスファンからやたらと「カブスは本当に、Shohei=大谷翔平を獲得できると思う?」と訊かれる今日この頃である。

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 今さら言うまでもないことだが、大谷は今オフのフリー・エージェント(FA)市場で最も重要な選手だ。Baseball-Referenceによると、これまでの通算成績を162試合換算した場合の本塁打数とOPS(出塁率+長打率)は以下の通りで、今オフFAとなった他の有力選手たちと比較しても突出している。来季、「打者」のみの出場に限定されてもなお、いかに価値のある選手であるのかが分かる。

大谷翔平(前エンジェルス)      40本塁打 OPS.922
JD・マルティネス(前ドジャース)  33本塁打 OPS.874
リース・ホスキンス(前フィリーズ) 36本塁打 OPS.846
コディ・ベリンジャー(前カブス)  33本塁打 OPS.829

 では、大谷にとって果たしてカブスは「最適解」のチームなのだろうか?

 とてもカジュアルな部分から考えていくと、まず、4月になっても雪がチラつくほど寒いシカゴの気候への適応は、ロサンゼルス近郊の温暖な気候に慣れた大谷にとって簡単なことではないのではないか?

 と思ったが、彼は元々、岩手県出身である。北国でのプレーがハンデになるとは思えないし、摂氏-5度前後にまで下がる冬は試合がないので、それほど大きな問題ではないだろう。カブス所属選手の圧倒的多数は、オフになるとロサンゼルスやアリゾナで過ごすのが普通で、シカゴを「仕事場」と捉えればいいだけのことだ。

 日本文化の有無についてはどうか?
 西海岸のロサンゼルスやサンフランシスコ、シアトルに比べれば、中西部のシカゴやその周辺地域は、日本人の比率が少ない地域ではある。それでも、郊外に日系企業の拠点がiいくつかあることから、日本の食材を多く揃える大型の日系スーパーや韓国や中国系のスーパーも存在する。日系企業の駐在員や出張者が愛好する日系レストランも多く、自炊するにしてもUber Eatsを頼むしても、まったく問題はない。

 目立つ場所に顔を出さなければプライバシーを侵害されることはないし、西海岸やニューヨークのような日系人の人口密度が多い場所よりも、気楽に過ごせると思う。経験上、それらの都市より、ダウンタウンで日系人を見かけるのは希なので、MVP会見で有名になった愛犬を連れて町中をうろついていたところで、そんなに気づかれないのではないか。

 では、シカゴでプレーする利点についてはどうだろう? 

 シカゴ、というより中地区でプレーするメリットは、西海岸の球団に比べて遠征の移動距離がかなり少なくなることだ。昨季、MLB30球団の年間移動距離(公式戦のみ)は、長かった順にアスレティックス(51,527マイル)、マリナーズ(49,036)、ジャイアンツ(46,158)、エンジェルス(43,942)、マーリンズ(41,742)、ドジャース(41,698)となっていて、西地区のチームが圧倒的多数だった。

 一方、ナ・リーグ中地区で最も移動距離が多かったのは、カーディナルス(35,524マイル)の13位。カブス(31,805)は21位と例年より多かったが、それはカーディナルスとロンドンで公式戦を行った影響だ。事実、24年はカブス(27,180)が28位、カーディナルス(26,647)は29位となる予定で、6位のエンジェルス(43,004)と比較すると移動距離は約3分の2で済む。
 
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