12月4日(現地)、ブルワーズは19歳の外野手ジャクソン・チョーリオと8年8200万ドルの長期契約を結んだ。何から何まで異例尽くしとも言えるこの大型契約について、さまざまな視点から解説していこう。
【関連記事】二刀流起用の不透明性、DH占有による選手起用の硬直化...大谷翔平獲得の「リスク要因」をあえて考えてみる<SLUGGER>
▼チョーリオって誰?
ベネズエラ出身のチョーリオは2021年1月に契約金190万ドルでブルワーズに入団すると、アベレージ・パワー・スピード・肩・守備の「5ツール」を備えた外野手として台頭。22年にマイナーリーグ版ゴールドグラブを獲得すると、今季は2Aと3Aで打率.283、22本塁打、44盗塁、OPS.805を記録した。
今季、史上初の40本塁打&70盗塁を達成したロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)とも比較される大器で、今年9月に『ベースボール・アメリカ』誌が発表した最新版プロスペクト・ランキングではジャクソン・ホリデイ(オリオールズ)に次いで全体2位に選ばれている。
▼デビュー前の選手では史上最高額契約
今回の契約は、20年にルイス・ロバートJr.がホワイトソックスと結んだ6年5000万ドルを大きく上回り、メジャーデビュー前の選手としては史上最高額を更新。しかも、出来高などをすべてクリアすれば最大で1億4250万ドル、日本円にして約210億円にまで増額される可能性がある。
メジャー昇格前/直後のトップ・プロスペクトと長期契約を交わす例はこれまでもあったが、今回のチョーリオのような規模の契約は異例。3Aですらまだ6試合しか経験していない若者にこれだけの額をコミットしたのも、同じく異例と言っていい。
▼ブルワーズの思惑
ブルワーズはいわゆるスモールマーケット球団で、今季開幕時の総年俸はMLB30球団中21位。ヤンキースやドジャース、メッツとは対照的な「貧乏チーム」が、なぜこのような大型契約を結んだのだろうか? 答えは「ブルワーズが貧乏チーム」だから。
今回の契約は確かにギャンブルだ。極端な話、チョーリオがメジャーでまったく通用しなかったとしても、キャリア早々に大怪我を負ってしまったとしても、ブルワーズは100億円以上の大金を支払わなければならないのだから。
一方で、チョーリオが球団の期待通りに活躍してくれれば、一転して大バーゲンになる可能性も秘めている。
ブルワーズのようなチームにとって、FA市場で大物を獲得することは事実上不可能。同じように、自分たちで育てた選手がスターになっても、FA権を取得したらその時点で引き留めるのはこれまた不可能だ。それだけに、若く才能豊かな選手をいかに安く、長く保有できるかが勝負となる。
6年後の29年、25歳のチョーリオが仮に打率.280、20本塁打、30盗塁クラスの選手になっていたとしよう。アクーニャJr.と比較されていることを考えれば控えめな予測とも言えるが、それでもFA市場に出れば目玉選手として争奪戦が繰り広げられるに違いない。
だが、今のうちに囲い込んでおくことで、ブルワーズは全盛期を迎えたスター選手を格安の値段で確保できる。そうすれば、貧乏球団でも優勝争いに加わる目が出てくる。アメリカでは今後も順調に物価が上昇すると考えられることも含めて考えれば、今回の8年8200万ドルの契約は「十分に勝算のあるギャンブル」なのだ。
今季開幕前、ダイヤモンドバックスは前年8月にデビューしたばかりのコービン・キャロルと8年1億1100万ドルの大型契約を交わした。キャロルは今季、ルーキーでは史上初の25本塁打&50盗塁を記録してチームのリーグ優勝に大きく貢献。満票で新人王に輝いた。チョーリオが“ブルワーズ版のキャロル”になってくれることを、ミルウォーキーのファンは期待しているに違いない。
構成●SLUGGER編集部
【関連記事】ガチガチの大本命ドジャースにもマイナス材料はある?大谷獲得候補チームの「○と×」【ナ・リーグ編】<SLUGGER>
【関連記事】戦力充実の世界一レンジャーズが抱える"時限爆弾"とは...大谷獲得候補チームの「○と×」【ア・リーグ編】<SLUGGER>
【関連記事】二刀流起用の不透明性、DH占有による選手起用の硬直化...大谷翔平獲得の「リスク要因」をあえて考えてみる<SLUGGER>
▼チョーリオって誰?
ベネズエラ出身のチョーリオは2021年1月に契約金190万ドルでブルワーズに入団すると、アベレージ・パワー・スピード・肩・守備の「5ツール」を備えた外野手として台頭。22年にマイナーリーグ版ゴールドグラブを獲得すると、今季は2Aと3Aで打率.283、22本塁打、44盗塁、OPS.805を記録した。
今季、史上初の40本塁打&70盗塁を達成したロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)とも比較される大器で、今年9月に『ベースボール・アメリカ』誌が発表した最新版プロスペクト・ランキングではジャクソン・ホリデイ(オリオールズ)に次いで全体2位に選ばれている。
▼デビュー前の選手では史上最高額契約
今回の契約は、20年にルイス・ロバートJr.がホワイトソックスと結んだ6年5000万ドルを大きく上回り、メジャーデビュー前の選手としては史上最高額を更新。しかも、出来高などをすべてクリアすれば最大で1億4250万ドル、日本円にして約210億円にまで増額される可能性がある。
メジャー昇格前/直後のトップ・プロスペクトと長期契約を交わす例はこれまでもあったが、今回のチョーリオのような規模の契約は異例。3Aですらまだ6試合しか経験していない若者にこれだけの額をコミットしたのも、同じく異例と言っていい。
▼ブルワーズの思惑
ブルワーズはいわゆるスモールマーケット球団で、今季開幕時の総年俸はMLB30球団中21位。ヤンキースやドジャース、メッツとは対照的な「貧乏チーム」が、なぜこのような大型契約を結んだのだろうか? 答えは「ブルワーズが貧乏チーム」だから。
今回の契約は確かにギャンブルだ。極端な話、チョーリオがメジャーでまったく通用しなかったとしても、キャリア早々に大怪我を負ってしまったとしても、ブルワーズは100億円以上の大金を支払わなければならないのだから。
一方で、チョーリオが球団の期待通りに活躍してくれれば、一転して大バーゲンになる可能性も秘めている。
ブルワーズのようなチームにとって、FA市場で大物を獲得することは事実上不可能。同じように、自分たちで育てた選手がスターになっても、FA権を取得したらその時点で引き留めるのはこれまた不可能だ。それだけに、若く才能豊かな選手をいかに安く、長く保有できるかが勝負となる。
6年後の29年、25歳のチョーリオが仮に打率.280、20本塁打、30盗塁クラスの選手になっていたとしよう。アクーニャJr.と比較されていることを考えれば控えめな予測とも言えるが、それでもFA市場に出れば目玉選手として争奪戦が繰り広げられるに違いない。
だが、今のうちに囲い込んでおくことで、ブルワーズは全盛期を迎えたスター選手を格安の値段で確保できる。そうすれば、貧乏球団でも優勝争いに加わる目が出てくる。アメリカでは今後も順調に物価が上昇すると考えられることも含めて考えれば、今回の8年8200万ドルの契約は「十分に勝算のあるギャンブル」なのだ。
今季開幕前、ダイヤモンドバックスは前年8月にデビューしたばかりのコービン・キャロルと8年1億1100万ドルの大型契約を交わした。キャロルは今季、ルーキーでは史上初の25本塁打&50盗塁を記録してチームのリーグ優勝に大きく貢献。満票で新人王に輝いた。チョーリオが“ブルワーズ版のキャロル”になってくれることを、ミルウォーキーのファンは期待しているに違いない。
構成●SLUGGER編集部
【関連記事】ガチガチの大本命ドジャースにもマイナス材料はある?大谷獲得候補チームの「○と×」【ナ・リーグ編】<SLUGGER>
【関連記事】戦力充実の世界一レンジャーズが抱える"時限爆弾"とは...大谷獲得候補チームの「○と×」【ア・リーグ編】<SLUGGER>
関連記事
- 大谷翔平が「土曜にジャイアンツ」「月曜にブルージェイズ」の球団幹部と面談済みか「交渉は最終段階」と米メディア報道
- 大谷翔平争奪戦で“第6のチーム”としてブレーブスが急浮上!アクーニャJr.、オルソンらと史上初の40本塁打カルテット結成も<SLUGGER>
- ヤンキース、ドジャースよりメッツ、ジャイアンツを選ぶべき?球場の特性から考える「山本由伸と好相性のチーム」<SLUGGER>
- 二刀流起用の不透明性、DH占有による選手起用の硬直化...大谷翔平獲得の「リスク要因」をあえて考えてみる<SLUGGER>
- “ShoBae”を発案した海外在住“大谷翔平のスーパーファン”にカナダメディア注目「日本、米国のほか東南アジア、韓国、台湾、南米からもメッセージ」