2019年の名珍場面を『THE DIGEST』のヒット記事で振り返るこの企画。今回は10年ぶりに世界一を奪還したプレミア12でのエピソードをお届けしよう。丸佳浩のファインプレーに対してアメリカ代表が示した行為は、まさにフェアプレー精神の真髄と言えるものだった。
記事初掲載:2019年11月14日
◆ ◆ ◆
スタジアムにいたどれほどの人間が“その行為”に気付けていただろう。
「世界野球プレミア12」スーパーラウンド第2戦、侍ジャパンVSアメリカ戦の6回のことだ。
この回の先頭打者、ブレント・ルッカーがカウント2−2から、侍ジャパンのサウスポー・大野雄大(中日)の150kmのストレートを捉えると、打球は左中間深くに飛んだ。多くの観客が長打を想像したその刹那、侍ジャパンの中堅手・丸佳浩(巨人)が必死に追いかけ、フェンスにぶつかりながらスーパーキャッチを見せた。
マウンドの大野は手を叩いて喜び、観客もそのプレーに酔いしれていた。
“その行為”が起きたのはそのあとだった。
長打になると確信してセカンドベースさえも蹴っていた打者のルッカーが、ファインプレーを食らったことを確認すると、三塁ベース上のあたりでヘルメットを取って掲げ、好守を見せた丸に向けて敬意を表したのである。
これはメジャーリーグの本場でも度々見られる、好プレーを見せた相手を讃える光景だ。
フェアプレー精神の真髄といってもいいだろう。
このシーンを見て想起したのは、この3月に東京ドームで開催されたMLB開幕シリーズ「マリナーズ対アスレティックス」、そして昨秋の「侍ジャパン対MLBオールスター」だ。
2つのシリーズは真剣な戦いの場である一方、日米野球の親交を深める絶好の機会でもあり、その大会の際にオーロラビジョンに流れたのが、フェアプレーの推進だ。映像では、日本とアメリカ、それぞれの国でのフェアプレーにまつわるシーンを再現しているのだが、これを見た時に、日米の間で温度差があることに気付かされた。
MLBのフェアプレーを紹介するPVでは、チームメイトではないが、出身国が同じもの同士が試合前の健闘を誓い合ったり、打球を追ってベンチに飛び込んだ選手を相手チームが手助けするシーン。あるいは、冒頭のルッカーのように、自身が放った打球が相手のファインプレーに安打を阻まれ、それでも選手を讃えるシーンなどだ。
一方、日本はプレーしているシーンくらいで、メジャーリーグのようなシーンが紹介されることはなかった。選手たちが整列している場面などしかなく、そこにフェアプレーのマインドが日米間で大きく違うことを感じずにはいられなかった。
記事初掲載:2019年11月14日
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スタジアムにいたどれほどの人間が“その行為”に気付けていただろう。
「世界野球プレミア12」スーパーラウンド第2戦、侍ジャパンVSアメリカ戦の6回のことだ。
この回の先頭打者、ブレント・ルッカーがカウント2−2から、侍ジャパンのサウスポー・大野雄大(中日)の150kmのストレートを捉えると、打球は左中間深くに飛んだ。多くの観客が長打を想像したその刹那、侍ジャパンの中堅手・丸佳浩(巨人)が必死に追いかけ、フェンスにぶつかりながらスーパーキャッチを見せた。
マウンドの大野は手を叩いて喜び、観客もそのプレーに酔いしれていた。
“その行為”が起きたのはそのあとだった。
長打になると確信してセカンドベースさえも蹴っていた打者のルッカーが、ファインプレーを食らったことを確認すると、三塁ベース上のあたりでヘルメットを取って掲げ、好守を見せた丸に向けて敬意を表したのである。
これはメジャーリーグの本場でも度々見られる、好プレーを見せた相手を讃える光景だ。
フェアプレー精神の真髄といってもいいだろう。
このシーンを見て想起したのは、この3月に東京ドームで開催されたMLB開幕シリーズ「マリナーズ対アスレティックス」、そして昨秋の「侍ジャパン対MLBオールスター」だ。
2つのシリーズは真剣な戦いの場である一方、日米野球の親交を深める絶好の機会でもあり、その大会の際にオーロラビジョンに流れたのが、フェアプレーの推進だ。映像では、日本とアメリカ、それぞれの国でのフェアプレーにまつわるシーンを再現しているのだが、これを見た時に、日米の間で温度差があることに気付かされた。
MLBのフェアプレーを紹介するPVでは、チームメイトではないが、出身国が同じもの同士が試合前の健闘を誓い合ったり、打球を追ってベンチに飛び込んだ選手を相手チームが手助けするシーン。あるいは、冒頭のルッカーのように、自身が放った打球が相手のファインプレーに安打を阻まれ、それでも選手を讃えるシーンなどだ。
一方、日本はプレーしているシーンくらいで、メジャーリーグのようなシーンが紹介されることはなかった。選手たちが整列している場面などしかなく、そこにフェアプレーのマインドが日米間で大きく違うことを感じずにはいられなかった。