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高校野球

スウィング軌道に表れる先進的な取り組み。愛工大名電のデータサイエンスを駆使した最新スタイルの野球とは?

氏原英明

2024.03.24

愛工大名電の各打者は、それぞれ場面に応じてスウィングを使い分けていた。写真:滝川敏之

愛工大名電の各打者は、それぞれ場面に応じてスウィングを使い分けていた。写真:滝川敏之

 手首を返さないスウィング――。

 優勝候補のひとつ愛工大名電ナインたちのスウィング軌道を見て先進的な取り組みを目指しているのを感じ取れた。スウィング軌道をあげるスタイルに高校野球では新しい野球を見た。

「フライをあげるのではなくて、ボールの軌道にバットを出していく。2ストライクを取られても三振を減らす、ランナー一塁や一、二塁の時のゲッツーを減らすとか、そういう意図があるんです」

【PHOTO】延長10回タイブレーク逆転サヨナラで、報徳学園が愛工大名電に競り勝つ|センバツ1回戦 愛工大名電 2-3 報徳学園
 指導歴42年の名監督・倉野光夫監督はそう語る。名電の選手たちはいわゆる一時話題になった“フライボール革命”のようなフライを打ちにいっているわけではなく、試合の場面に応じてボールへのコンタクトを変えているのだ。投手の足元を狙う打球が必要な時もあれば。逆にそれが足枷になる時もある。選手個々、ボールカウント、相手投手の特徴を頭に入れながら打席に立っている。

 倉野監督は取り組みについてこう語る。

「バットが(新基準に)変わったので、余計に芯に当てることが必要ということで、当てやすいスタイルを取り入れました。だからバットを振り上げているわけではなく、ボールが垂れてくる球に対してバットを出していくことを考えたらこういうスタイルになっているということです」

 試合は投手戦で推移した。

 愛工大名電はエースの大泉塁翔ではなく背番号「10」の右腕・伊東尚輝。ストレートとスライダー、フォークを投げ込む本格派だ。9回を投げて8奪三振1失点の好投。1-1の同点でタイブレークにもつれるほどの投げ合いを演じた。

 昨年の準優勝校・報徳学園に対して伸び盛りの右腕を起用した理由を倉野監督はこう語る。

「伊東がここへきて、成長の跡が見られて今日は先発させました。冬の練習でやってきたことが分析で言えば数値で表れてきたんです。この数値だったら、絶対に抑えれるぞと思ってマウンドに上がるようになった。その数値とは伊東の投げるボールは以前まで縦と横の変化がほとんど同じで、シュート成分が多かっったんです。今は縦変化の方が2倍くらいになって、シュートがなくなって、前に進んでるような威力あるボールになった。本人も実感をして、ストレートを中心に交わすことなく投げ切れるようになった。迷いなく先発に起用しました」
 
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