プロ野球

<2019ベストヒット!>リーグ連覇の西武はなぜ2年連続でCS敗退したのか。 指揮官も嘆いた「選手層」の根深い問題

中島大輔

2019.12.29

本拠地開催のCSファイナルでまたも敗れた西武。その背中はいつも以上に寂しげだった。写真:朝日新聞社

 2019年の名珍場面を『THE DIGEST』のヒット記事で振り返るこの企画。今回はプロ野球の話題から。2年連続でパ・リーグを制しながら、日本シリーズに進出できなかった西武ライオンズ。その主たる要因は、指揮官も嘆いた「選手層」の問題にあった。
記事初掲載:2019年11月10日

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 日本中のスポーツファンの関心がラグビーワールドカップの「日本対スコットランド」に集まっている頃、暗闇と静寂に包まれたメットライフドームの駐車場に、埼玉西武ライオンズのユニホームを脱いだ秋山翔吾が私服で現れた。

 待ち構える報道陣が聞きたいのは、もちろん今後の去就についてだ。だが秋山の胸のうちを大きく占めていたのは、約2時間前、CSファイナルステージでソフトバンクに喫した4連敗の屈辱だった。

「層の違いと言われちゃうと……。僕は層の中の一人なので。それを僕が判断して、『層が薄いのでね』と言ってはいけないと思うし。それぞれがもっとレベルアップするという目標にはなったんじゃないかなと思います」

 ソフトバンクの工藤公康監督に老獪な勝負師ぶりを見せつけられた直後、西武の辻発彦監督は「選手層の差」を敗因に挙げた。

 シーズンの対戦成績が12勝13敗と互角だったにもかかわらず、CSで4連敗に終わったのは、確かにコマ数の差が響いた。しかしチームの長が考えるべきは、なぜ、これほど両者の選手層に違いが出たかである。

 今季5年連続の全試合フルイニング出場を達成した秋山は、チームを俯瞰的に見て話した。

「(ベストコンディションでない選手を)今日は休ませようとか思わせるくらい、他の選手が出てきているかと言われたら、分からない。でも結局、監督が選手を使っていますから。層を厚くする使い方をしていけば良かったんじゃないですか。(新しい戦力が)出なかったのは確かですよ。ワンポジション、グルグル回っていた時期があったじゃないですか」
 他球団を見渡しても、秋山のポジションを脅かすほどの選手はなかなかいない。

 一方で西武の外野に限った場合、レフトの金子侑司は133試合で打率.251、ライトの木村文紀は130試合で打率.220という打撃成績だったにもかかわらず、レギュラーとして起用された。2人が守備と足で大きな貢献をしたのは事実だが、張り合える若手がまるで出てこなかった。

「まあ、負けるつもりがないので、今のところ」

 西武の2019年シーズンが終わった10月13日、秋山は9ヵ月前と同じ言葉を口にしている。浅村栄斗(楽天)と炭谷銀仁朗(巨人)が抜けて迎えた今季、若手にとってはポジションをつかむチャンスだ。そうしたレギュラー争いがチームを底上げするとキャプテン・秋山は期待する一方で、自身は高い壁になると宣言した。

 だが、愛斗、鈴木翔平、戸川大輔という期待の若手はチャンスを与えられたものの、木村や金子を脅かすことができなかった。

 個人的に不安を覚えたのが、高卒4年目の愛斗だ。開幕一軍入りした愛斗のフリー打撃を見ていると、ひたすらフルスウィングするばかりで、練習に意図を感じられないのだ。一軍にいた頃、中村剛也や栗山巧が取り組む姿勢を見て、心に響くものはあっただろうか。

 入団1年目から外野のレギュラーを勝ち取り、同シーズン後半、栗山の定位置だったセンターを奪ったのが秋山だ。プロ野球の一軍という枠の中で、多くて9つのポジションしかないレギュラー争いを繰り広げることで、選手たちは成長していけると秋山は考えている。

「『こういう選手が出てきたけど、負けらんねえ』っていう気持ちを、自分を高めていく材料にしていきたい。そういう選手が出てきたら、(レギュラーを争う立場としては)嫌ですけど、自分をもっと高めていけるかなとも思いますね」

 山川穂高、外崎修汰、森友哉らが辻監督の下で出場機会を与えられ、リーグを代表する選手に成長した。一方、その下の世代が伸び悩んでいる。
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今井達也が伸び悩む背景に潜んでいるもの