高校野球

9回2死の場面で敢行した盗塁に悔いなし――。なぜ八戸学院光星は土壇場でリスクを冒す選択をしたのか?

氏原英明

2024.03.26

最後はリスクを冒した攻撃が裏目に出た形となったが、果敢な走塁をみせた八戸学院光星。写真:滝川敏之

 盗塁はリスク――。

 野球界にある格言のひとつに、そのように言われる時がある。試合終盤での積極的な攻めはむしろ自ら首を絞める。こと盗塁においては僅差の試合での仕掛けは、その結果いかんで大きく試合を左右する時がある。だから、試合の序盤にはチャレンジできても、試合終盤に盗塁のリスクを背負うことは御法度とされるケースは少なくない。

【PHOTO】星稜が八戸学院光星との接戦を制し、5度目の8強入り|センバツ2回戦 八戸学院光星 2-3 星稜
 2回戦の八戸学院光星-星稜の試合は、まさに、そんなクライマックスを迎えた。

 1点ビハインドの9回表、八戸学院光星は代打の寺沢海音が中前ヒットで出塁、代走に1回戦でも好走塁を見せた岡本大地を送り込んだ。しかし、二死となって1番を迎えた場面のカウント0-1の場面で盗塁を試みたが、敢えなく盗塁死。ゲームセットとなった。

「僕が試合に出る以上はホームに還らないといけない。それが役目だと思っています。それができなかったのは自分の力不足です」

 代走の岡本はそういって悔しさを滲ませた。昨秋の県大会はベンチ外。東北大会になって声がかかりメンバー入り。甲子園前の練習試合では盗塁を全て成功。自信を持って大会に入った。近年でも八戸学院光星はベンチ入りの選手を多く使う機会が増え、その中でもしっかりと役割をもらい、岡本大はやりがいを感じていた。

 1回戦でも代走で出場。9回に同点のホームを踏んでタイブレークにもつれた試合の勝利に貢献している。この日も試合終盤での出番を想定して準備していたが、土壇場の場面で回ってきたのだった。

「準備不足というか、もっとできることはあったのかなと思う」

 岡本がそう語るのは、盗塁を失敗した場面以外も盗塁する機会を窺っていたが、相手投手のクイックがうまく、スタートを切ることができなかったからだ。岡本大はその前の打者のところから代走に入っていたが、スタートを切るタイミングが見つからなかったという。その中で「1アウトの時に打者が三振して、どうにかして2アウトから二塁に進めたかった」と問題の場面での盗塁死となったわけである。
NEXT
PAGE
成長過程のある高校生が失敗を恐れては、何も学ぶことはできない