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高校野球

【甲子園熱戦レポート│7日目】「子供たちはやはり打ちたいですから」低反発バット導入でも野球を変えなかった青森山田の“矜持”<SLUGGER>

氏原英明

2024.08.13

青森山田は佐藤洸の一発を含め11安打の猛攻で9得点。長野日大に圧勝した。写真:THE DIGEST写真部

青森山田は佐藤洸の一発を含め11安打の猛攻で9得点。長野日大に圧勝した。写真:THE DIGEST写真部

 一回りくらい大きくなっただろうか。

【関連記事】【夏の甲子園有力校番付】4季連続出場の広陵と強力投手陣を擁する報徳学園が両横綱! センバツVの健大高崎はエースの離脱が不安要素<SLUGGER>

 青森山田のショートストップ吉川勇大の身体つきを見て目を奪われた。

「6、7キロくらいですかね。大きくなりました。ホームランは出ていないですけど、自分の中では飛距離が変わってきたなと感じています」

 3打数ノーヒットと快音はなかったが、中軸としてチームを引っ張る吉川には自覚が見えた。

 第1試合で登場した青森山田は、持ち前の強力打線が爆発。11安打9得点を挙げて長野日大を圧倒し、3回戦進出を決めた。

 今大会の優勝候補を見ていく中で、注目となるのは低反発バットへの対応だ。

 従来のバットと違って打球が失速する低反発バットは各校を悩ませてきた。過去と同じようなスタイルで続けるのか、それとも、戦い方を変えるのか。各校の試行錯誤が続いた。地区大会の序盤などでで強豪校が敗退したりしたのも、そうしたバットの影響は少なからずあるだろう。

 そうだとすると、長打を基軸とせずに戦うチームの方が勝ちやすい。短打を連ねてバントや盗塁、エンドランを駆使していく。昨日、順当に勝ち進んだ明徳義塾や関東第一、広陵はそもそもスラッガーを重視せず戦うチームで、新基準のバットが生きる野球を実践してきた代表例と言える。
 とはいえ、バットが変わったからといって安易に野球を変えるというのも、育成年代のチームではやるべきではないという考え方もある。

「彼らのやる気に直結しますからね。子供たちはやはり打ちたいですからね。そこを目指さないと野球の技術の向上にはつながらないんじゃないかなと思います」

 青森山田の兜森崇朗監督はそう語る。バットが変わっても、野球を変えてこなかったことへの矜持を感じる言葉でもあった。兜森監督はさらにこう続ける。

「トレーニングをしっかりやることが大事ですよね。バットが変わって小技や足を使う、短打を狙っていく。うちもそれをやっていないわけでもないんですけど、そっちに走ってしまったら野球の向上にはつながりませんから。大は小を兼ねるということで、しっかり振れるということがチームの土台になければいけないと思っていますね」

 チームを引っ張る3番の對馬陸翔と5番の吉川はこれまで木製バットを使用して戦ってきている。この春のセンバツに出場した時も話題になった2人だが一貫してバットを変えずにいることも、このチームの矜持なのかもしれない。
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