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プロ野球

「選手たちにセカンドチャンスを与えたい」4戦全敗でも大きな意義のあったジャパンブリーズのカリビアンシリーズ参加<SLUGGER>

中島大輔

2025.02.18

昨季、くふうハヤテでウエスタン・リーグ2位の奪三振を記録した二宮。カリビアンシリーズは彼のような選手にチャンスを与える場としても機能する。

昨季、くふうハヤテでウエスタン・リーグ2位の奪三振を記録した二宮。カリビアンシリーズは彼のような選手にチャンスを与える場としても機能する。

「え? カリビアン?」

 1994年~2010年まで阪神やアスレティックスなどで活躍した藪恵壹は昨年7月、翌年開催されるカリビアンシリーズに投手コーチとして参加を打診されると、心底驚いた。日本のチームが初めて招かれ、ベネズエラ出身で元DeNA監督のアレックス・ラミレスが「ジャパンブリーズ」を立ち上げて出場するというからだ。

「レベルが高いのは知っているからね。ラテンの4ヵ国が国代表で来ているし。ここでウインターボール(=ウインターリーグ)をやっているヤツはみんな目立つから。大会の歴史も深いし」

 ドミニカ共和国、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコで11月から1月にかけて行われるウインターリーグの優勝チームが招待国を招き、毎年1月下旬から2月上旬、カリビアンシリーズは開催される。1949年に始まり、今年67回目を迎えた大会だ。

 25年大会の開催地となったメキシコのメヒカリは、藪にとって特別な思い出のある街だった。

「メヒカリは俺が2006-07年のウインターボールでやっていたチームだからね。その時、フェルナンド・バレンズエラが同じチームにいて。昨年亡くなった時に何もできなかったので、追悼の意味も込めて来ました」

 元ドジャースの左腕投手バレンズエラはメキシコの英雄だ。藪がアギラス・デ・メヒカリでチームメイトになった2006-07年、当時46歳のバレンズエラは81マイル(約130キロ)の4シームで抑えていた。

 一方、06年シーズンをメキシカン・リーグのポトロス・デ・ティファナで過ごした藪はシーズン終了後、初めてウインターボールに身を投じた。バレンズエラやマック鈴木(元マリナーズなど)、ジョージ・アリアス、デリック・ホワイト(ともに元阪神など)などと同じチームで登板し、08年にサンフランシスコ・ジャイアンツでメジャー復帰する足掛かりとした。
 日本ではまだなじみの薄いウインターリーグだが、中南米では大変な盛り上がりを見せる。アメリカや日本のシーズンオフに行われ、地元のファンに勇姿を見せたいメジャーリーガーや、翌シーズンの契約を勝ち取りたいフリー・エージェント(自由契約)の選手がアピールする。

 そして、ウインターボールの頂点とも言える大会がカリビアンシリーズだ。今回、市場拡大を視野に初めてアジアのチームが招かれた。それがジャパンブリーズだった。

 外国人選手初の2000安打を達成するなどNPBで偉大なキャリアを築いたラミレスは、明確な目的を持ってジャパンブリーズを結成した。

「日本球界のシステムにより、不運にも多くの選手はNPBでプレーする夢をかなえられていない。今大会はNPB復帰への足掛かりにするだけでなく、アメリカやカリブ海諸国のチームにアピールする機会にもなる。ジャパンブリーズは選手たちにセカンドチャンスを与えたい」

 NPB球団と契約するには毎年秋のドラフトで指名されなければならないが、26歳を超えた選手は“年齢の壁”にぶち当たり、指名を見送られるケースがほとんどだ。一般的に野球選手は20代中盤から後半にピークを迎えると言われ、MLBでは30歳前後で一花咲かせる者も珍しくない。だが、20代中盤までにNPB球団と契約できなかった選手はそれ以降のチャンスを得るのも難しくなる。

 そこで近年、日本の独立リーグで腕を磨き、韓国や台湾、メキシコのプロ野球に挑戦する選手が増えてきた。ラミレスはそうした現状を踏まえ、ジャパンブリーズを結成したのだ。

 ジャパンブリーズは今年のカリビアンシリーズに臨む前、昨年12月にベネズエラへ遠征し、現地ウインターリーグのオールスターチームと親善試合を実施。平間凜太郎、二宮衣沙貴(ともにくふうハヤテベンチャーズ静岡)、浅野森羅、佐藤友紀(ともに茨城アストロプラネッツ)、根岸涼(カイマネス・バランキーヤ)、福田真啓(信濃グランセローズ)の6投手が実力を評価され、現地のウインターリーグ球団と契約に至った(※6投手の所属は当時)。

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