今、メジャーリーグで話題沸騰中の「トルピード(魚雷)・バット」。通常のバットに比べてボールを捉えるエリアが太くなっていて、まるでボウリングのピンのような形状をしている。このバットを使ったヤンキースの選手たちが本塁打を連発していることで、今、アメリカではさまざま論議が巻き起こっている。新たなトレンドになりつつあるこの「魚雷バット」にまつわる基本的な事実をここで整理しておこう。
▼開発したのはMIT出身のアナリスト
この「魚雷バット」を開発したのは、昨年までヤンキースのアナリストを務めていたアーロン・リーンハート。一部日本メディアでは現在もチームに在籍しているように書かれているが、今季からマーリンズに引き抜かれて「フィールド・コーディネーター」という肩書で働いている。
現在48歳のリーンハートは世界的な名門マサチューセッツ工科大(MIT)出身の物理学者で、ミシガン大で教鞭をとっていたこともある人物。2022年からヤンキースのマイナー打撃部門に加わり、昨季からメジャー部門の主任アナリストへ昇格した。ウェブメディア『The Atletic』にリーンハートが語ったところによると、「魚雷バット」の狙いは「ボールを思いきり叩くことができるエリアを重くすること」。バットの芯にボールを当てるのではなく、最もボールが当たりやすい箇所を芯にする逆転の発想とも言える。
▼ルール上は完全に「合法」
「こんな奇妙な形のバットはルール上OKなのか?」――そんな風に思ったファンもいるだろう。実際、アメリカでは違法バットだと主張する向きも一部にあるようだが、結論から言うと完全に「合法」。MLBの公式規則(3.02)では、バットの規格は「最も太い部分の直径が2.61インチ(約6.6センチ)、長さ42インチ(約106.7センチ)以内」とされているだけで、実際にこの「魚雷バット」についても「ルールの範囲内」と見解を発表している。 ▼実際にどんな効果があるのか?
上述したように、真っ芯で捉えるエリアが事実上広くなると同時に、打ち損じが少なくなるという効果がある。実際に「魚雷バット」を使って本塁打を放った遊撃手のアンソニー・ボルピーは「年に1球でも(魚雷バットのおかげで)ファウルを稼げるなら使ってみる価値はある」と語っているが、ファウルどころではない効果を得ているようだ。また、コディ・ベリンジャーによると「重量配分がちょうどいい」とのことで、「手の近くが重くなっているので、むしろ軽く感じる」点が最大のメリットとも語っている。
▼ヤンキースの専売特許ではない
29日の試合で5本塁打を浴びたネスター・コルテス(ブルワーズ)が「去年も使っていた選手がいたことは知っている。何も新しいことじゃない」と語ったように、「魚雷バット」はヤンキースの専売特許というわけではない。この週末だけで少なくともジュニア・カミネロ(レイズ)、グレッグ・ジェファーズ(ツインズ)が実戦で使用しており、ベリンジャーもカブス時代に練習で試したことがあったと証言している。「魚雷バット」にとどまらず、バットの芯のエリアを広げる試みは、程度差こそあれ多くの球団が取り組んでいると言われる。
▼“魔法の杖”というわけにはいかない?
もっとも、この「魚雷バット」が球界全体に浸透すれば、一気に打高投低になる......と考えるのは早合点のようだ。カルロス・コレア(ツインズ)は「カッター、スイーパー、スライダーのように外へ逃げる変化球はバットの先で捉えるわけだから、強く打つのがより難しくなるかもしれない」と指摘。元捕手のスティーブン・ボート監督(ガーディアンズ)も「結局のところは、使う選手がどう感じるかだ。バットがホームランを打つわけじゃないからね」と語っている。
「魚雷バット」の本当の効果を知るには、もう少し時間が必要かもしれない。
構成●SLUGGER編集部
▼開発したのはMIT出身のアナリスト
この「魚雷バット」を開発したのは、昨年までヤンキースのアナリストを務めていたアーロン・リーンハート。一部日本メディアでは現在もチームに在籍しているように書かれているが、今季からマーリンズに引き抜かれて「フィールド・コーディネーター」という肩書で働いている。
現在48歳のリーンハートは世界的な名門マサチューセッツ工科大(MIT)出身の物理学者で、ミシガン大で教鞭をとっていたこともある人物。2022年からヤンキースのマイナー打撃部門に加わり、昨季からメジャー部門の主任アナリストへ昇格した。ウェブメディア『The Atletic』にリーンハートが語ったところによると、「魚雷バット」の狙いは「ボールを思いきり叩くことができるエリアを重くすること」。バットの芯にボールを当てるのではなく、最もボールが当たりやすい箇所を芯にする逆転の発想とも言える。
▼ルール上は完全に「合法」
「こんな奇妙な形のバットはルール上OKなのか?」――そんな風に思ったファンもいるだろう。実際、アメリカでは違法バットだと主張する向きも一部にあるようだが、結論から言うと完全に「合法」。MLBの公式規則(3.02)では、バットの規格は「最も太い部分の直径が2.61インチ(約6.6センチ)、長さ42インチ(約106.7センチ)以内」とされているだけで、実際にこの「魚雷バット」についても「ルールの範囲内」と見解を発表している。 ▼実際にどんな効果があるのか?
上述したように、真っ芯で捉えるエリアが事実上広くなると同時に、打ち損じが少なくなるという効果がある。実際に「魚雷バット」を使って本塁打を放った遊撃手のアンソニー・ボルピーは「年に1球でも(魚雷バットのおかげで)ファウルを稼げるなら使ってみる価値はある」と語っているが、ファウルどころではない効果を得ているようだ。また、コディ・ベリンジャーによると「重量配分がちょうどいい」とのことで、「手の近くが重くなっているので、むしろ軽く感じる」点が最大のメリットとも語っている。
▼ヤンキースの専売特許ではない
29日の試合で5本塁打を浴びたネスター・コルテス(ブルワーズ)が「去年も使っていた選手がいたことは知っている。何も新しいことじゃない」と語ったように、「魚雷バット」はヤンキースの専売特許というわけではない。この週末だけで少なくともジュニア・カミネロ(レイズ)、グレッグ・ジェファーズ(ツインズ)が実戦で使用しており、ベリンジャーもカブス時代に練習で試したことがあったと証言している。「魚雷バット」にとどまらず、バットの芯のエリアを広げる試みは、程度差こそあれ多くの球団が取り組んでいると言われる。
▼“魔法の杖”というわけにはいかない?
もっとも、この「魚雷バット」が球界全体に浸透すれば、一気に打高投低になる......と考えるのは早合点のようだ。カルロス・コレア(ツインズ)は「カッター、スイーパー、スライダーのように外へ逃げる変化球はバットの先で捉えるわけだから、強く打つのがより難しくなるかもしれない」と指摘。元捕手のスティーブン・ボート監督(ガーディアンズ)も「結局のところは、使う選手がどう感じるかだ。バットがホームランを打つわけじゃないからね」と語っている。
「魚雷バット」の本当の効果を知るには、もう少し時間が必要かもしれない。
構成●SLUGGER編集部
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