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MLB

「昇太と僕が信じていることが同じなら良いことが起こる」今永昇太が敏腕ホットビー投手コーチと挙げたシーズン初白星の舞台裏<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.04.03

米国初登板で今季初勝利を挙げた今永。次回登板はホーム開幕戦のパドレス戦だ(C)Getty Images

米国初登板で今季初勝利を挙げた今永。次回登板はホーム開幕戦のパドレス戦だ(C)Getty Images

 3月29日土曜日(現地)、アリゾナ州フェニックスで行われたカブス対ダイヤモンドバックスのシリーズ第3戦。東京での開幕シリーズを連敗で終え、キャンプ地に戻ってオープン戦を数試合戦ったカブスが、1勝1敗で迎えた大事な試合のマウンドに送り込んだのは今永昇太だった。

「投げミスだったり、指にかかっていないボール、ハードヒットが野手の正面を突いたボールなんかもありましたけど、今日に関しては紙一重のどっちかを拾えたな、とそんな気分です」

 敵地チェイス・フィールドの廊下に用意されたカブスのスポンサー・バナーの前で、今永はそう言った。彼が日本で開幕投手を努めたのが12日前、日本時間3月18日のことである。米国に戻ってから、当初はオープン戦で投げる予定だったが、クレイグ・カウンセル監督やトミー・ホトビー投手コーチら首脳陣との話し合いで、「故国での登板と長距離移動の疲労」を考慮され、投球練習を2回行うだけで米国初戦を迎えた。

 その間、キャンプ地にいた関係者の子供たちと一緒にバスケをしたり、練習の手伝いをしてももらったりと、ほのぼのと過ごしているように見えたのだが、心の中ではそれなりの格闘があった、と今永は語る。

「やはり、めちゃくちゃ不安ですし、僕はメンタルが強くないっていうことを自分で理解した方が、それがメンタルが強いことになるって学びがこの12日間でありました。昨日なんかすごい不安でしたけど、今日の朝になって、すごく腹くくって開き直れたんです」

 試合序盤、彼は毎回のように走者を出しながらも、尻上がりに調子を上げて、7イニングを投げきった。どんな試合にも「勝負のアヤ」みたいなものはあるが、この試合では味方の好守と投手コーチのある助言がそれに当たるかも知れない。

 1対1の同点で迎えた4回、1死二塁のピンチで今永は7番ガブリエル・モレノに低めのスプリットを上手くバットを合わされて、右中間寄りへのフライを打たれた。捕球位置を考えれば、三塁へのタッチアップを許しても仕方のないところ。ところが“PCA”ことピート・クロウ=アームストロング中堅手が三塁へのダイレクトスローで走者を刺した(ビデオ判定になった際どいプレーだが、手から滑り込んだ走者への「ドンピシャ」の好返球だった)。
「チャンスがあったらトライするものだろ?」とほくそ笑んだのは、金髪丸坊主に青い星印で日本でも注目されたPCAである。いわゆる、「フィジ・ギフ」。与えられた身体能力を思う存分生かしてプレーする様は、見ていて気持ちいい。

「早く落下地点に入ったので、(三塁へ)投げることに集中できた。昇太を助けられて良かったと思っている。まぁ、でも、昇太が投げる日に守るのは楽しいんだよ」

 日本人記者相手の社交辞令のように聞こえるコメントだが、フライボール・ピッチャーで知られる今永だからこそのコメントとも言える。

 大事なのは、あのプレーが最初の判定通りセーフだったのならば、今永の球数が増え、6回終了時点で降板させられていた可能性が高かった、という部分だろう。なぜなら、今永の投球数は事前に「85球前後」と決められていたからだ。PCAのファインプレーが出た時点=4回終了時で59球だった今永の球数は5回=9球、6回=10球と極端に少なくなっていったが、全部の球数が予定より多い91球だったことを考えれば、PCAの「大遠投」は大きかった。

 もちろん、それを可能にしたのは今永自身の危機管理能力のおかげである。たとえば、ダイヤモンドバックス打線と言えば、この日のリードオフヒッター、スイッチヒッターのケテル・マーテイ内野手や、一昨年の新人王コービン・キャロル外野手を思い浮かべるが、今永は「カギになる打者」として、6番を打つユージニオ・スアレス三塁手の名を挙げていた。

 スアレスは前日の試合で2打席連続本塁打を放っていたから「当たり前」と言えば当たり前だが、実は昨年の初顔合わせで7回2安打1失点と好投した時、唯一の失点となったソロ本塁打を打たれていたのが、そのスアレスだった。

「得点圏で彼を迎えた時は、歩かせるっていうのも8割、9割、頭に入れていたんで、ちょっと制御できずに球数が重なったというよりは、ある程度計算して。次のモレノ選手の四球はダメですけど、そういう計算通りに言ったので紙一重なんです」
 
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