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MLB

「一人一人が何をすれば良いのかを分かってるなと感じる」今永昇太も認める“貧乏軍団”ブルワーズ快進撃の秘密<SLUGGER>

ナガオ勝司

2025.08.26

 特筆すべきは、ブルワーズがそれを全米レベルのスター選手不在のまま、オフでもトレード・デッドラインでも、驚くような補強をせぬままこの快進撃を成し遂げているということだろう。

 唯一、スターと言えるのは、トレードで加入した18年にナ・リーグMVPに輝き、2年後に9年2億1500万ドルの大型契約を結んだイェリッチだが、彼もここ数年は怪我や不調で低迷していたのは誰もが知るところ。2021年のサイ・ヤング賞投手コービン・バーンズ(現ダイヤモンドバックス)は、フリー・エージェント(FA)になる1年前にトレードで、21年夏にトレードで加入し、4年で3度の地区優勝に貢献したウイリー・アダメス遊撃手は昨オフ、FAとなってジャイアンツへ移籍した。歴代クローザーの左腕ジョシュ・ヘイダー(現アストロズ)や、デヴィン・ウイリアムズ(現ヤンキース)もそれぞれ、トレードで失っている。

 主力選手が次から次へと他球団へ流出してしまう理由は、ブルワーズの選手年俸総額に余裕がないから。もっと平たく言えば、「お金がないから」だ。

 11年に地区優勝を遂げた際は主力選手の年俸が高騰し、チームの年俸総額は直近20年間で最高のメジャー13位にまで膨れ上がった。それでも、ドジャースやヤンキースに比べれば「格安」だったわけだが、低予算球団のブルワーズでは、「維持できないレベル」。そんなわけで、12年から年俸総額の削減が始まり、その結果、16年に全30球団最低にまで落ち込んだ。

 ただし、プロ野球チームである以上、「お金がないから勝てない」と泣き言を言うわけにはいかない。低予算をものともせず成功したアスレティックスやレイズ同様、ブルワーズも編成部門からチームを再構築した。

 まず、15年にアストロズGM補佐として黄金時代の礎を築くのに貢献したデビッド・スターンズ(現メッツ編成本部長)をヘッドハンティングし、GM職に据えた。また、レイズのスカウト及び選手育成部門のディレクターだったマット・アーノルド(現編成本部長)をGM補佐に抜擢。スターンズGMが就任3年目の18年に中地区優勝に導いたのを皮切りに4年連続でプレーオフ進を果たした手腕を買われてメッツに引き抜かれると、アーノルドが内部昇格し、今季は地区4連覇を目指しているわけだ。
 カブスとのシリーズ初戦の試合後、イェリッチは「去年と変わったことなんて何もないよ」と肩をすぼめた。

「何とかして勝つ方法を見つけるってのは、毎年やってることだから、今年になって始まったことじゃない。今までずっとこうして勝ってきたし、それはここにいる誰もが自分たちの野球を心得ているってことだと思うんだ」

 イェリッチが「ずっとこうして勝ってきた」と言う通り、ブルワーズは現在、ちょっとした黄金時代の真っ直中にある。前述のように18年から4年連続プレーオフに進出し、そのうち2度は地区優勝。22年こそプレーオフを逃したものの、翌23年から2年連続地区優勝を果たし、今年は3連覇を目指している。そして、今季に関しては、それは大谷翔平(ドジャース)やアーロン・ジャッジ(ヤンキース)、あるいは今季、本塁打を量産して話題沸騰のカル・ローリー(マリナーズ)のような、WAR(Win Above Replacement)上位に入るような選手が不在のままで勝ち続けているのだ。

 打撃・走塁・守備・投球といったベースボールのあらゆるプレーを数値化し、選手の総合的な貢献度を示すセイバーメトリクスの代名詞WARのランキング(Fangraph版)において、ブルワーズの選手で最も高いのはフレリック外野手の3.2で55位。これにコントレラス捕手の3.1が58位、コリンズ外野手の2.9が72位が続く。80位前後に先発のフレディ・ペラルタ投手、ジャクソン・チューリオ外野手、テュラング内野手と続く。今季、完全復活した感のあるイェリッチは138位(2.1)となっているが、これはDHでの出場が多いからだ。本人の名誉のために書いておくと、今季はすでに19年に44本塁打を記録して以来最多の26本塁打を打っており、5月下旬には週間MVPに輝いている。

 大事なのは、突出した選手がいないのにチームとして強い、という部分だ。なぜか?
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