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【玉木正之のベースボール今昔物語:第18回】野村克也に稲尾和久、トム・シーバーまで...半世紀に及ぶスポーツライター歴で学んだ「一流選手から真理を聞き出す極意」<SLUGGER>

玉木正之

2025.09.26

 大打者という以上に、データ野球の監督として名を馳せた野村克也さんには「ピッチャーとバッターの勝負の結果は、ホームランだったり三振だったり、いろいろあると思いますが、何種類くらいあるものですか?」と訊いたことがある。

 すると即座に「4種類」という答えが返ってきた。私が狐につままれたような気持ちでポカーンとしていると、その4種類を簡単に説明してくださった。

「バッターが勝つ時は、ピッチャーが投げ損なったか、バッターが上手く打ったかの2種類。ピッチャーが勝つ時は、バッターが打ち損なったか、ピッチャーが上手く投げたかの2種類。投打の結果は合計4種類だけだ」

 メジャーの投手にも、単純な質問をぶつけたことがある。メッツやレッズで通算311勝を記録したトム・シーバーが引退後に来日した際、週刊誌でインタビューした時には「ピッチャーにとって一番大切なことは?」と質問をぶつけた。

 答は「リリースポイントできるだけバッタ-の近くにすること」。これまたナルホドと納得するほかない言葉だった。
 
 1988年の春、星野仙一監督率いる中日がフロリダのドジャータウンでキャンプをした時には、ドジャースでMVPを3度受賞した伝説的名捕手ロイ・キャンパネラがコーチとして現れた。

 そこで、「野球というスポーツで一番大切なことは?」と訊いてみた。すると、即座に「プレイ・キャッチ!(キャッチボールをすること!)」という答えが返ってきた。「ボールの縫い目にキチンと指をかけて、相手の胸に正確に投げる。それを、常に怠らずにやれないと、メジャーリーガーにはなれないよ」

 プロフェッショナルの名選手は、誰もが素晴らしい"言葉"を持っている。人間は言葉で考える動物だから、言葉を持っていない人や、言葉が返ってこない人は、物事を考えていない人……つまり、二流の選手と言うほかないのだ……というのが、半世紀の間、野球選手と関わったスポーツライターの結論である。

文●玉木正之

【著者プロフィール】
たまき・まさゆき。1952年生まれ。東京大学教養学部中退。在学中から東京新聞、雑誌『GORO』『平凡パンチ』などで執筆を開始。日本で初めてスポーツライターを名乗る。現在の肩書きは、スポーツ文化評論家・音楽評論家。日本経済新聞や雑誌『ZAITEN』『スポーツゴジラ』等で執筆活動を続け、BSフジ『プライムニュース』等でコメンテーターとして出演。主な書籍は『スポーツは何か』(講談社現代新書)『今こそ「スポーツとは何か?」を考えてみよう!』(春陽堂)など。訳書にR・ホワイティング『和を以て日本となす』(角川文庫)ほか。

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