約45分間の質疑応答では1位指名に対する喜びに始まり、楽天というチームや、仙台の街の印象などを語っていった。この頃には表情も柔らかくなり、あらゆる角度の質問を澱みなく返していた。
「ピッチャーのボールを最大限引き出すところが自分の持ち味」と語り、楽天球団史上初の捕手1位指名については、「勝ちに導けるのが捕手の仕事。そこに一番貢献したい」と、早くも正捕手獲りへの自覚がうかがえた。
また、ドラフト直前には秋季リーグの最終戦を戦っていた。渡部はベンチスタートで、8回に代打で登場。2死二、三塁のチャンスだったが空振り三振。9回は本職ではない一塁を守って試合を終えている。このことについて聞いてみると、以下のような答えだった。
「今日はベンチスタートだったので、何かこのチームに貢献できることはないかということで、声を出したり、ベンチワークをしたり……。チームが勝つために動こうと思ったのが1番です」
チームが勝つために動く──。それはマスクを被ろうが被ってなかろうが関係ないのだろう。ちなみに試合は8-1で、見事國學院大に勝利している。
会見、応援団からのエール、胴上げと一連の流れが終わった後、吉井理人監督や石井GMをはじめとする楽天の関係者が会見場を訪れた。吉井監督は「映像で見て一度組んでみたいキャッチャー」「座っている仕草を見ても投手が気分良くなる雰囲気を出している」と絶賛。渡部は「焦らずにと言われるが、早くレギュラーをつかんで試合に出たい」と闘志を見せた。
高校の先輩に黒川史陽、大学の先輩には中島大輔がいて、大学ジャパンで一緒だった伊藤樹もいる。渡部にとって楽天は溶け込みやすい環境なのではないか。宗山塁とセンターラインを形成するのも楽しみだ。若いチームで強さを見せ、2013年以来のリーグ優勝、そして日本一へ。「勝てるキャッチャー」の加入が、東北の地をさらに熱くする。
文●加賀一輝
【著者プロフィール】
かが・いっき。1988年3月6日、愛知県生まれ。成蹊大学卒業後、一般企業を経て独立。ライティング、編集など幅広く活動する。ライターとして『野球太郎』『J SPORTS公式サイト』などに寄稿。DAZN『THE ANNOUNCER』セミファイナル進出を機に、キャスター・実況者としての活動も開始。YouTube『Sports Show (旧ハムショーのメジャー実況ch)』にてMLBやサッカーの実況配信を担当する。2016年~23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成に従事。趣味は草野球で、左投左打の投手兼一塁手。
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