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プロ野球

新助っ人ピレラの開幕好スタートは偶然じゃない。活躍を呼び込んだ攻守両面での「フォア・ザ・チーム」精神

前原淳

2020.06.24

 開幕が大きく遅れたことで、コンディション調整に十分な時間を充てられたことも追い風となった。3月6日の西武ライオンズとのオープン戦で右手首付近に死球を受け、しばらくリハビリ中心の調整を余儀なくされた。開幕延期を見込んでの再調整という意味合いもあったかもしれないが、練習強度を一度落とし、打撃再開から時間をかけてスウィングの強度、実戦を重ねることができた。

"フォア・ザ・チーム"は守備位置だけでない。打順にもこだわらない。2月に始まった実戦から6月12日の練習試合まで1番から7番を任された。

 今年の広島打線の中軸は鈴木誠也と西川龍馬。彼らを生かすためにピレラが打線に組み込まれる。当初1番に期待された田中広輔の状態が開幕前に下降気味だったことで、開幕1番に抜擢された。開幕3戦で中軸の2人によって本塁に生還したパターンは1度のみだったが、3試合で14打数5安打は十分な働きと言える。首脳陣は長野久義の起用も検討するが、いい流れを切りたくない思いからか、ポジションを固定しての起用が続いている。
 
 同じスペイン語を母国語とするメヒアの存在も大きい。15年に在籍したヘスス・グスマンは一軍では口数が少なく、カープアカデミーの練習生が多くいた二軍の方が表情が明るかった。母国語で会話できるストレスフリーの環境は外国人選手にとっては大きい。現に球団は16年にエクトル・ルナを獲得した際、スタッフからの進言もあって二軍ブルペン捕手だったクレート氏を一軍通訳に登用した経緯がある。

 今季のピレラには、クレート通訳とともにメヒアがいる。育成選手時代を含めれば日本で5年目を迎えるドミニカンは相談役でもあり、指南役でもある。「日本でのキャリアが長いのでいろいろな話を聞いて自分のものに取り入れるようにしている」。日本人投手の配球の傾向や日本特有の湿度の高い夏などの情報を収集。メヒアの打席の配球を頭に入れて打席に臨むことで好結果につながるメリットもある。

 今後はチーム状況によって打順の変動もあるだろう。ポジションも左翼だけでなく、一塁、三塁を守る可能性は十分にある。ただ、どこを任されても「フォア・ザ・チーム」。すでに真っ赤に染まった助っ人は広島のためにプレーし続ける。

文●前原淳

【著者プロフィール】
1980年7月20日・福岡県生まれ。現在は外部ライターとして日刊スポーツ・広島担当。0大学卒業後、編集プロダクションで4年間の下積みを経て、2007年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。華やかなプロ野球界の中にある、ひとりの人間としての心の動きを捉えるために日々奮闘中。取材すればするほど、深みを感じるアスリートの心技体――。その先にある答えを追い続ける。『Number』などにも寄稿。

【カープキャンプPHOTO】第1クール最終日。シート打撃では鈴木、小園、正随がホームラン!

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